いつも、新曲が出るたびに文を書いてきた。それこそこのシングルに収録されている(どころか両A面の片方である)生命体の時だって、書いた。のだけど、せっかく楽しみにしていたシングルが出てから文を書くのにずいぶん時間がかかってしまった。
単にバタバタしていたから、というのもあるし、何度も聞き返し、手触りを確認していたらこんなに時間がかかったとも言える。実際、年末年始、帰省先から自室に帰りふわふわする頭の中、歌詞カードを取り出して、この音楽たちに対しての感覚を言葉にしようとしたのだ。
だけど、結局うまく言葉にならずに今日まで時間がかかってしまった。
言葉を選ばずにいうなら「死」の感覚が強いような、そんな気がした。死という言葉が強いなら、終わりと言い換えても良い。終わりの気配が、ずっと、収録された4曲それぞれ、どこかつかず離れず、漂っている。
明るくポップなサウンドのはずなのに、それでも隠れず、いやなんならむしろ濃くなるように、終わりの気配がする。
なんで、こんな寂しくなるんだろう。なんで、なのに、こんなに聴きたくなって聴くたびにちょっと安心するんだろう。
光の跡は、終わっていく気配がある。
ずっと悲しい感覚があって、その中でなんなら少し無気力感に襲われることもある。
いつか、終わるのに。
終わる中で、何があったらいいのか、終わるのに何をしても意味がないんじゃないか。そんなこと、考えれば考えるほど虚しくなるはずなのにな。
終わるのだ、ということを実感した日を覚えている。その中で何かを好きでいること、頑張ること、優しくいること、そういうことの意味が全部分からなくなった。
だけど、そうじゃないよな。
星野源の言葉の中で好きなものはたくさんあるけど、一つはタワレコの「NO MUSIC, NO LIFE」の言葉だ。
音楽はね、死ぬと聴けなくなるんですよ。
今のうちだぜ。
それは闘病生活の後の言葉だったと記憶している。出会った頃、その言葉に行き着いて、ああそうか、と思った。終わるのに、じゃない。終わるから、だ。
光の跡はその時のことを思い出す。
意味があるのかって、そりゃ、ないだろう。終わる、終わったら何も残らないかもしれない。だけど、だからなんだ。だからこそだろ。
生命体自体は、以前も文を書いていたけど。
生き方は、選べるということ。
死ぬな、とうたう、この歌のことを思う。
走り出したい、と思う。光の跡の次に聴くと尚更。だから、とまた思う。
陸上のテーマ曲でもあったけど、同時に星野源が繰り返し「生きている全てのものに」と言ってくれたことが、私は嬉しかった。
クソみたいなことに負けてたまるか、不自由も何もかも、希望に変えるのは、自分のはず。
走れ、走れ、と声を上げる。それは、今ここにいて、立って、生きている、その時間への後押しだ。
どこにだっていける、だって生きる場所は道は、歩き方は、私が選ぶのだ。
跳ねるサウンドが、生きて生活をする、そのことを大きく肯定して手を振る。
おともだちの感想をオードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム前にどうしても書きたかった。きっと、また違った感覚になるだろうから、あのラジオの初解禁の時に覚えたわくわくを、それから、何かあるたびに再生して弾ませた心を言葉に残しておきたかった。
私は、この曲が大好きだ。
あのふたりの曲だ、と思うし、あのふたりを好きな人から見た「ふたり」だとも思う。
そして何より、光の跡・生命体と続いてこの曲を聴くと私は何度も「ああそうだよな」と思うのだ。そうだよな、続く理由、そうだよな。
気怠くてくだらなくて、だけど、そんな夜を私は、彼らは、大好きなんだよな。意味はあるのか、の答えはここにもあった気がする。あるわけないだろ、それで良いんだよ。
例えばそこに周りが「運命」と「好き」だと言うのかもしれない、意味付けしてしまうのかもしれない。だけどそんなことも、関係ないんだろうな。クソだわ、と言う言葉が二人の声で聴こえる気がする。
それはそれとして、私たちが勝手な意味付けをしようがしまいが続いていく長電話が存在するのだ、と思う。それが、こんなに勝手に嬉しい。
そうして最後、Beyond the Sequenceが流れる。
打ち込みのインスト曲は機械が喋ってるようでとても好きです、という源さんの言葉を聴くたびに思い出す。どのインスト曲も好きだけど、この曲はなんでか、特別好きだ。
ああ確かに喋ってるな、とわくわくしたからかもしれない。終わるのだ、ということを色濃く感じた数曲の終わり、機械たちが勝手に好きに、楽しそうに喋るのを聴くことに安心するからかもしれない。
意味なんてなくて良い。何も残らなくて良い。だけど、何か、自分以外が、続いていくのだ、ということは無性に安心して嬉しくなる。
それが、こんなに心地よく、楽しそうな音なら、どれだけ嬉しいだろう。
これも、勝手な「意味付け」ではあるんだけど。
まあ、生きてるうちしか、そんな勝手なこともできないので。