えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

あさ

改札で、誰かが引っ掛かる。そのすぐ後ろ、走りながら階段を駆け降りたひとがいたから「ああ大丈夫かな」とドキドキした。案の定、何度タッチしても改札を通れず、後ろのひとがイライラし出す。
結局、駅員さんが「先に通してあげて」と促した。通り抜け走るその人が、迷惑そうに振り返る。

 

次は通れるといいな、と思いながら眺めたら、さっきまでのはなんなのかと思うくらい、あっかり、通れた。その人が、そっと、見てないと気付かないくらいさりげなく、柱を蹴って、歩く。

 

少し怒りながら歩く、その人を気味悪そうに何人かが振り返った。その人がどんな顔をして歩いていたかわからない。ただ、その背中に苦しいよなあと思った。朝から、そんな思い、したくなかったよなあ、と思う。
ムカつくし恥ずかしいし、かなしいよな。

 

そりゃ、公共の何かを蹴るのは悪い。悪いのだけど、その誰かに直接ぶつけないように、でも溢れた気持ちに、なんとも言えない気持ちになってる。
それでも蹴るな、は、本当に、本当にそうなんだけどさ。

 


わかるよ。
わかるよ、なんて言葉薄くて気味が悪くて自己陶酔かもしれないけど。わかるよ。

 


せめて、少しでも良い日でありますように。こんな朝だったことを忘れて、笑える日でありますように。痛む足が、早めに痛くなくなりますように。