えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

Break on!玖

クラブはひとりになれる場所だ、と言った人のことを思い出していた。
最近仕事がまた修羅場なので常にグロッキーにお仕事をしてる。そうすると先輩が心配して、「ディズニーランドとかさ、そういう現実忘れられるとこ行ってリフレッシュするのもありかもよ」と助言してくれた。それを聞いてああなら、クラブで音楽を聴きたいな、と思い、たまたま観ていたTwitterで好きなラッパーがたくさん揃ったパーティーがあると知る。
これだわ、と思ってチケットを取る方法を調べて予約した。
うっかり二日酔いでいったのでこれは大丈夫かな…といつもはない不安に襲われつつも、なんか、全然平気だったし、大きな音と暗い照明の中で好きな音楽を聴くのは、本当に幸せな時間だった。なんだか、諸々の疲労に効く。
うん先輩、ディズニーランドも最高だけど、今の私にはこっちだったらしいよ。



そんなわけで、Break on!玖に行ってきた。


好きな音楽が増えたな、と単純に思う。前なら「知らないひとたち」の音楽、「俺の話」を1から耳を傾けるように聞いていたけど、
1年弱通うとなんとなく「あ、あの時の」と気付くことが多い。特に今回は衝動的にチケットを取ったので、がっつりとは演者を確認できてなくて、だから余計にその「あ、あの人だ」が嬉しかった。
例えばDUMMYさんのライブ。以前観た時に「あ、すげー良いな」と思っていて、2回目だからこそ、より歌詞を楽しんで聴けて、なんかそういうの、良かったな、と思う。そういう「時間を重ねたこと」「何かを続けたこと」の良さや楽しさ、やってきて良かった、と出会える瞬間がHIPHOPは特に多い。そんな気がする。
それはもしかしたら、彼らがマイクを通してそれを殊更口にしてくれるからかもしれない。
やってきて良かったと思ってるし、やってきて良かったと全部、自分の道のりを「正解」にする。



毎日の中にある色んなもの……中には決してポジティブなだけじゃないものも含めて「全部この物語の伏線だった」と言い切ろうとする強さが、私がこの音楽を好きだと思う理由かもしれない。




そして、数ヶ月ぶりに聴くlily sansさんは相変わらず今回も最高だった。し、やっぱり何度も聞くと同じ曲でも「変わる」のが本当に面白い。
曲のメッセージ性が強い分、その曲が持つ言葉とかは変わらないはずなんだけど、その日のコンディション、文脈で印象はめちゃくちゃに変わる。
そういう意味では、今回聴いた「luv.sic」は今まで聴いたなかで1番柔らかく優しかった気がするし、それはもしかしたら、私のコンディションが、だったのかもしれない。



これで良かった、と言えるまでにかかる時間だとか、そう言うためにいる胆力だとかに途方に暮れることがあるし、正直そういうの全部放り出して知らねーって大の字になりたくなることもあるけど、こうして聴いた音楽が柔らかかったこと、格好良かったこと。そういう記憶はたぶん、知らねーになったとしても引き戻るためのきっかけになる。



その後の(Freak's'繋ぎ最高!)Kyonsさんが口にした「言えることを言う」ということをずっと考えてる。
自分なりにHIPHOPを聞いたり、特に日本語ラップを良いな、と思うたびに「誰かが自分の言葉で話そうとすること」が好きなんだ、と思う。特にここ最近、自分の言葉で話されないこと、コミュニケーションが断絶することにうんざりきていたので、KyonsさんのMCがめちゃくちゃ沁みた。
自分の言えることが言いたいこと、というのは、なんか、すげえな。
し、曲も、明るくて楽しくて、でも強くて、あの笑ってしまうような空気感がずっと良かった。


genzowさんのDJタイム、それからクローズ前の開斗さんのDJタイムでわかる曲が増えた。
ノリ方が分からないこととか、なんとなく居場所ねえなって思うことが減った。それは、知ってることが増えたからじゃなくてたぶん、ひとりだろうが誰かとだろうがここは「この音楽が好き」でいても良いんだということを知ったからだと思う(もちろん、立場や場所によってはそうじゃないだろうし、人によってはそうじゃねえよと思うんだろうけど)
ノれる時はノって疲れたらぼんやり音楽に揺れたりお酒を飲んで。そういう空間は心地よく「ひとり」だと思う。



からの初めましてのHARZY UNIさんは「楽しすぎて飲みすぎた」と言いながらも呂律めちゃくちゃ回るし「音楽で踊る」みたいなパフォーマンスだった。
なんか、音楽と遊ぶことがうまいかたってたまにいるけどHARZY UNIさんはまじで「音楽の友だち」みたいな人だった。
歌って踊って、知らない曲でも楽しい。音楽と遊ぶのがうまいひとは、音楽を通して「こっちだよ」と楽しい法に連れて行くのもめちゃくちゃにうまい。



KZさんのパフォーマンスは見る度にお芝居を観ている時みたいなワクワク感がある。
あとこれは、色んなラッパーさんのパフォーマンスを観て感じたことだけど、たぶん私はそれがでかいんだよな。
今から「お前」に届けるぞ、という観られる側の人の視線とか熱量とか圧があると人間すげーと思う。めちゃくちゃ思った。
ビートの上で聴くバースも、無音で語りとして聴くバースもどちらも響くのは言葉自体とそこに込めたものの強度なんだろうなあ。



そしてLIBROさん。もう、まじで、LIBROさんのパフォーマンスを生で見れたよ…と何度も途中アガってしまった。最高、まじで最高。
何度も音源で聴いた好きな曲が、目の前で立ち上がること、本当に何万回味わっても興奮し続けるんだと思う。
一人でうろうろしながらなんかだるいなって気持ちを誤魔化し聴いた音楽で、一緒にノれる、楽しめる。いつだかの憂鬱な散歩道のり記憶に楽しかったクラブイベントでの記憶が重なる。



何より今回、出てくるひと出てくるひとみんな最高で、知ってるひとも初めましての人もずっと良くて(諸々の事情から途中からになったのが悔やまれるくらいに)なんだか、それがすごく嬉しかった。
LIBROさんのパフォーマンス直前のマサモリさんのコメントがすごく良くて、それは単に「夢があるな」って話では、私にとってはなかった。もちろん、ヘッズだった誰かがこうしてパーティーを主催して、そこに大好きなひとをゲストとして招いて、ってそれ自体がすごいことだと思うし、夢ではあるんだけど。
だけど、、私にはそれ以上に、誰かがそれくらい、そんな奇跡を起こしてしまうくらいに好きなものがあることが、なんだか無性に最高だなって言いたくなるくらいに嬉しかった。


そしてそれが、私にとっても楽しくて最高で、たまらなく好きだと思えることが、本当に幸せなことだと思ったのだ。
音楽を通して過ごすなかで、伝わること受け取れることがある。そんな気がする。
そういうものが詰まった場所と時間で、また大丈夫と好きなものをたくさん摂ったから、どうにかこうにか、楽しく過ごせるんだ。



憧れのSTOMPにも行けた。うれしい。次は二日酔いじゃない状態でいくんだ…。