えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

ドリエンライブ

やばいものを観た。
何度も反芻している。
47歳の脱サラした「普通の人」のはずのおじさんが、横アリで声を枯らしていく姿を見ながら、私は泣いていた。


佐久間宣行のオールナイトニッポン0 presents ドリームエンターテイメントライブに行ってきた。




声優さんに芸人さん、HIPHOPのレジェンドに最高のロックバンド。そんな出演者たちのラインナップ、それからそれを進行するのが佐久間さんというすごいライブイベントである。
そのライブイベントを「なんのジャンルのライブか」と聞かれると難しい。
ただ、どういう人たちの集まりだったのか、と聞かれたらシンプルで、「佐久間さんが好きな人たち」の結晶で、かつ、「佐久間さんを好きな人たち」なんだろう。



佐久間宣行のオールナイトニッポンXもそうで、エンタメの唐揚げがあったら100個食べる、というCMの通り、本当に「どこに時間があるんですか?」ってくらいの量の面白いもの、楽しいものをたくさん観て聴いて、そしてそれに心底嬉しそうにしている番組なんだ。
そして私は、それが本当に好きなんだ。
それは、普段のフリートークもそういうところがあって私は佐久間さんの目を通して世界が面白いに溢れているんだな、と思える瞬間が心底嬉しくて好きだ。



会場に向かう道すがら、様々なラジオ・アーティストのグッズを身に着けている人たちが集まっていく風景を見て、ドキドキした。
そして、横浜アリーナに入り、チュロスの香りが溢れてて爆笑しながら嬉しくなった。
「ラジオリスナー」という普段姿の見えない同じ周波数で繋がるひとたちがそこにいる。
きっとここにきた経緯も、普段の生活も好きなものもみんなバラバラで、考えも感じ方も違う。でも同じラジオが好きだということだけ一緒で、それはなんて楽しいことだろう。



一人目のアーティストは花澤香菜さん。
2曲目で「Moonlight Magic」を聴いて、テンションが上がるとともに涙腺が緩む。
それは、私にとってはラジオのことを更に好きになるきっかけになったドラマ「お耳に合いましたら」のオープニングだ(ということをイコールにできたのはライブに向かう道中の友人との会話の中でだけど)
そこで、ああここには好きなものが詰まってるんだ、と改めて思う。
それから彼女自身が「ラジオの虫」だからこそ、会場に集まる一万人の「ラジオ好き」に目を輝かせる。そんなところにもストレートにやられてしまった。そうだよね、と思う。
そうだよね、普段ひとりで聴くラジオが好きで、それは別に誰かがいなくても良くて、でも好きなものを同じように好きな人たちがいるってことが具現化されてる景色は奇跡みたいだよね、と心の中で頷いた。
恋愛サーキュレーションも最高。高校時代何万回も口ずさんだ曲をこうして生で聴く日がくるとは。あと全然関係ないけど、私あの頃から韻踏んでる歌詞好きだったんだな…。



そこから徹底的に場が壊れていく芸人さんパート。破壊力がやばい黒沢さんから始まってもうなんか、すごく笑った。
すごい。
普段そんなにお笑いをみないんだけど、こないだから人に勧められたお笑いからちょっとずつ見出しててそのたびにこのカルチャーやべえ、最高だな、と噛み締めてるんだけど、いやお笑いってすげえ。
黒沢さんのパフォーマンス、パフォーマンスって言っていいのか分からないんだけど、いやでもあれは、パフォーマンスだった。面白くて、色んなことを笑いに変えてて、最高に好きだった。


からの金田さんのパート。確かにあの破壊力の後はしんどいwとなりつつも、私、あのパフォーマンスなんか無性に好きだった。なんだろう。
テレビをほぼ見ない人間だったので、初めて聴いた曲&観たダンスだったんだけど、それ含めて、なんか、好きだな〜〜〜!と思った。


そしてしゅーじまんのStandby。その後のトークパートの菅田さんへのコメントなど諸々含めて最高。細部がいちいち「わかる」表現があって褒め言葉としてめちゃくちゃムカついてすげえ好きでした。なんだったん?あとStandby、それはそれとして名曲なんだよな。



からの、RHYMESTER
4月末の大阪生業から食らって楽しみにしていたRHYMESTER
アウェー(色んな意味で)だから…と言いながらしっかりぶちかますKing of Stage、大好き。
だし、だからこそ自己紹介的な「HIPHOPRHYMESTER」の名乗りから始まるような構成で最高だった。
好きな曲、楽しい曲からアガる曲、そして最後の刺さる曲。パフォーマンス姿を観ながらずっと「どうしたい?」と聞かれてるみたいだった。

ちょうど前回更新のover the sun(局違うけどライブ中も話題に出てたから許されたい)でジェーン・スーさんの思う「HIPHOP」の話があった。







それを踏まえても思う。
お前はどうしたい?と聴いてくるこの音楽は私は大好きだ。そしてそれは私が「そう聞かれていたい」つまりは、この人たちの前では「ちゃんと自分で選んだ自分でいたい」と思っているからそう聴こえるんだろう。
曖昧な評価基準じゃなく、自分の思う最高のもの、良いもの、面白いもの、その表現を磨いて色んな人を巻き込む。
HIPHOPはそんなカルチャーだと思うし、そこのレジェンドであるRHYMESTERはそんな天才たちの集団だ。
そして、このラジオイベントも、そんなところに繋がるんじゃないか。



そして、サンボマスターである。何度もその曲で背中を押してくれるロックスター。
物凄く詳しいわけではなくても「この人たちは自分の味方だ」と信じさせてくれるロックスター。
そんな人たちのステージは思った以上に食らうものだった。





言葉は、時々足りなくなってしまう。
そのまま受け取ってくれたら伝わるのに、とか、その曖昧なものを言葉にして出さないと「分かって」なんて無理だよ…とちょうど悩んだ1週間の締めだったからかもしれない。
すごい演奏、歌、熱量で「お前に俺は話してるんだ」「聴けよ」「サボんなよ」と語り掛けてくるステージは、問答無用の説得力があった。
「生きてまた会おう」「約束しよう」という言葉はあの時、アリーナの一万人ではなく、私、に向けられていた。
音楽は世界を変えられないかもしれない。それでもだからなんだと「世界を変えさせてくれよ」と歌い続けることかできるロックバンド、大好き過ぎるよ。




そうだ、面白いも楽しいも現実のクソを変えてくれることはない。
何かを救う方法でもないと思う。何も変えない。一瞬、忘れられるだけ。
だけなんだけど、私はそれが大好きで、そういうもので歩いてきた。


サンボマスターの山口さんが煽り、横浜アリーナの真ん中、佐久間さんが歌う。



「世界を変えさせておくれよ」

「毎日を美しくしたい意味なく暴れてはっちゃけたい」

「僕を滅ぼす闇に美しく歌う君を探しにきたよ」



スキルだとか関係なく、涙が出た。声が枯れても掠れても、歌詞が間に合わなかったり間違えても、そこには歌があって、だから音楽が好きだと思う瞬間の結晶みたいだった。
いつだって、面白いを届けてくれる佐久間宣行さんの姿は、そんなことを確かに私たちに教えてくれて、だから、船長と呼んで、私たちは彼が大好きなんだ。



テレ東を辞めてなぜかトロッコに乗ってるおじさんを見て、たくさん笑って、今、ありがとうって思ってる。
面白いは世界を救わないかもしれない、変えないかもしれない。だけど、人をひとり支えることができる変えることができる。
きっとその先、きっと良いことがある、良い世界に変わる。そう信じたくなる最高の時間が、あのライブだったんだろう。