えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

Creepy Nutsのオールナイトニッポンpresents日本語ラップ紹介ライブin大阪城野音

Creepy Nutsのラジオが好きな理由はたくさんある。週に一度思い切り笑わせてくれるからだとも言えるし彼らの喋りの温度感が落ち着くからというのもある。
でも一つ、大きな好きの要素があって、それが彼らが好きな音楽を紹介するところなのだ。
いつだかのインタビューで、オールナイトニッポンでまるで友達にこの曲やばいって勧めるみたいに好きな音楽を、HIPHOPを勧められるのがる楽しい、と言っていたのが私はとんでもなく好きだった。


もともと、私の音楽の楽しみ方が友達の「この曲やばい」が中心だったというのもある。やばい音楽はそれだけでももちろんやばいが、誰かの「この曲やばい」はなんというか、思い出もそのままくっ付いてきてよりその曲が好きになるのだ。薄暗い公園、ブランコの上、携帯から流れてくる音楽に興奮したあの夜みたいな夜を、私は何度も、Creepy Nutsオールナイトニッポンで味わってきた。
それの"実写版"のライブがCreepy Nutsオールナイトニッポンpresents日本語ラップ紹介ライブin大阪城野音である。




初め、ふたりの足音(って勝手に思ってるけど違うかもしれない。でもともかくあの演出ほんと好き)が近付き、板の上に立った瞬間からライブがスタート。
初っ端、二人の表情に目を奪われる。
Creepy Nutsってね、格好良いんですよ。めちゃくちゃ格好良いんです、知ってました?
私は知ってたけど毎回びっくりします。
板の上の魔物と合法的トビ方のススメでぶちかまされた。

砕いて裂いて巻いて
焚いて吸って吐いても
まして炙っても打っても得れない快感


歌詞を聴きながら思う。本当にそうだ、これだ。
昨日から何度も何度も昨日の記憶を擦り減りそうなくらい再生して、それでもあの瞬間、あの野音のじりじりした暑さの中で観た聴いた感じた快感が恋しい。あの気持ち良さは、たぶん、代用が効かない。ぶっ飛びそうな、というか完全にぶっ飛んだ心地よさのことをずっとずっと思い出している。




そこから彼らのトークになって、いつもラジオから聞こえていた軽口とともにイベントの趣旨が紹介され、トップバッターの775さんへとバトンが渡される。

出てきたその姿を見ただけで納得する、というRさんの言葉に納得した。まじで爆発するようなエネルギーとでもどこか軽快な感覚。歳下の方なのに姐さん!と呼びたくなるような心地よさの音楽。
音の運び屋。そうご自身を表現していたけど、懐の大きさとおおらかさ、それでいてちょっとぶっ飛んだパンチライン
音楽って楽しい、と思った。


レゲエもそういえば、Creepy Nutsを本格的に好きになるまでそんなに意識して聴いたことがなかった。でも、ラジオでかかるたび、そのリズム感や流れる言葉、考えにリペアされていくような気分になる。



気取ってなくて、ラフででも格好良くて、なんというか、着心地のいいTシャツみたいだ。落ち着く。よってらっしゃい、という言葉にふらふら招かれてしまう。し、招かれた先、あんなに楽しい音楽があるならもう、寄らない手は無いと思う。



そしてDOZAN11さんですよ。それこそ、誰の曲かすら、レゲエというジャンルすら理解しないまま我々世代の人間なら一度は口ずさんだことのある一生一緒にいてくれや、を聴いてしまった。やばい。
し、なんだろうな、本当にふたりがライブしてる時、楽しそうで楽しくて心地よくてすげえそれが良かった。


レゲエのパフォーマンスの話がすごく好きで。
音楽のジャンルにとかく疎い私ではあるけど、当たり前だけどそこには歴史があるし人がいる。
775さんもDOZAN11さんも、レゲエという音楽を信じていてそこに向き合って音楽を作っているんだな。
音楽ってすげえってずっと考えてる。だというのに、すげえって言葉にするとどうしようもなく軽くなってそれが歯痒くてうまくいかない。
775さんパートのライブ中本当に楽しくてクラクラするくらい気持ちよくて、こういうのが良いな、と思った。知らない言葉や文化、思想をこんな風に触れられる好きになれる。こういうのが良い。
DOZAN11さんのMCを思い出してより思う。



続いてのMC TYSONさんは、ラジオでゲストで来られていたこともあり、どこか親しみが(勝手に)あった。
腕にめっちゃいかつい刺青が入ってて、ある意味でこんな機会がなければなかなかそれこそ触れることのなかったかもしれない音楽、ジャンル、人だったけど屈託のないトークも、空気感も1発で好きになってしまった。すごくこう、リスナーとの話とかを交えてくれて、なんか、サービス精神の塊みたいなひとだった。
その上で、ダークな音楽も愛情のこもった音楽もあって、なんか、本当にHIPHOPってその人の物語を歌うんだな、と納得する。私はHIPHOPを聴くたびにそういうところが好きだと毎回思う。


ともすればすぐに冷笑されがちな「自分語り」をこんな風に格好よくする人たちを知れたことは私にとってめちゃくちゃラッキーだった。
そうやって音楽を作ってストーリーを紡ぐひとたちのことを大好きだと思った。


音楽を作ることが、自分と向き合う方法でそれがしんどいこともあれば、消化にも昇華にもなっていて、しかもそれがこんな風に誰かに届く。すごいことだな。



MC TYSONさんとRさんのコラボ、I NEEDも最高にキマっていた。全然違う生い立ちのふたり、スタンスも違う。その違いを歌ってるんだけど根っこがかなり近いことを向き合って歌う二人に感じてグッとくる。
近い、というとやっぱりズレるな。
でもそれぞれに自分に必要、というものの先は違うんだけど必要な理由、それを求める熱量、その結果はきっと、同じところに繋がってる。

MC TYSONさん、優しくてブリンブリンでめちゃくちゃ強そうで、それでも足りないって思うこと、もストレートに歌っていて、なんか、ああ好きだ、と思った。
すごくないですか。一曲一曲は短くて、でも聴けば聴くほど、この人のことが好きだと思う。
ライブってすげえ、音楽ってすげえ。
こういうことが伝わるってことなのか、と心底思った。


し、そこからの三人のトークが、完全にあの日のラジオでそれにも最高ににこにこした。そうなんだよな、やっぱりこのライブ、オールナイトニッポンpresentsであの番組の実写版なのだ。私は昨日、それを噛み締めるたびに嬉しくなった。



ゲスト大トリのSHINGO★西成さんは、もう、凄い。DJ松永さんが始まる前、神社みたいな人、って言ったことに納得する。目の前に神社があった。土着でちょっと怖くて、でも安心する。
言葉の一つ一つが、重い。真っ直ぐに届く。伝統芸能みたいだと思った。
能楽を一時期勉強していた頃があったけど、あの頃に触れていた言葉に似ていた。それは高尚って話が言いたいんじゃなくて、脈々と受け継がれてきたような言葉の強さの話だ。
茶目っ気もあって楽しくて安心する。居酒屋でああいうおっちゃんに出会えると私はいつも嬉しくてついつい話し込んでしまうんだけど、そんな気分だった。
心地よくて安心して、おかえり、とRさんに言ってたけど、自分にまで言ってもらったような錯覚があった。
ここにきて音楽を聴けば大丈夫だと思った。音楽、やっぱりすげえ。セラピーで暴力にもなり得て、でも、やっぱりそれを作る人がそう願えば、そんな気持ちを込めれば、どこよりも安全な場所になる。



ラジオもそうなんだよな。ここだけは大丈夫だ、と思える場所なのだ。
エンターテイメントという誰かを楽しませようと他でもない人間が作り出したものが私は大好きだな、と思った。傷付けたり嗤ったり、そういうことの方が簡単でシンプルな中で、楽しませようと思っている人がいることを何回でも思い出させてくれるエンターテイメントが私は大好きだ。


SHINGO★西成さんの音楽の懐にじんわりもう頭のてっぺんまで浸かっていたら、まさか灯取虫まで聴けると思わなかった。イントロが流れた瞬間、心臓が止まるかと思った。
セカンドオピニオン、Rさんのソロアルバム、私めちゃくちゃ大好きなんですよ。どうしようもないドツボハマった時に絶対聴くアルバムで、その中で灯取虫は、まだ大丈夫だと手を握ってくれるような気持ちになる。そういう曲だった。
頭のてっぺんまで音楽に浸ってるこのタイミングでこの曲はやばいと思ったし実際やばかった。
30歳のRさんが、しかも生でSHINGO★西成さんと歌っている。目の前でそれがみれている現実が信じられなかった。
滲むような寂しさと遣る瀬なさが好きだ。どうしようもない気持ちでわざと遠回りして歩いた仕事帰りの道の光景が染み込んだ音楽の記憶に優しい景色が付け加えられていく。



Rさんの歌い方も柔らかくてすごく良かった。あの頃の寂しさがなくなったわけじゃないのかもしれない。でも大丈夫だ、と言える根拠を得て、それを抱える方法を少し見つけた、そんな気がした。そしてそれを優しい顔をして笑って一緒に歌うSHINGO★西成さんの姿に心底安心したことを、私はずっと忘れないと思う。


そんなやべえ音楽を怒涛で聴いて、その後のCreepy Nutsの二人のMCも最高に良かった。
今回私は気付いたんですが、好きなものがある人が好きなんだと思う。好きなものできらきら目を輝かせている人が心の底から好きだ。ただただ好きだ、最高だという気持ちだけのその表情を見てるだけでお腹がいっぱいになる。
今回、座席が驚くほど近くて最早途中で見るのに照れてしまう距離だったんだけどDJ松永さんの横顔、目がすげーーーきらきらしてて、うっわぁすげえ!と思った。この人のこと好きだなあと思った。
なんか、良いな。嬉しいな。好きなものに自分が触れられたこともだけど、本当に誰かの嬉しそうな顔をあんな風に見れたの、奇跡なんじゃないか。



言葉は、ナイフにもなるし毛布にもなる。
そのSHINGO★西成さんの言葉のことをずっと考えてる。ずっと、聞きたくない言葉ばかりが溢れててそういうものに触れる度にごりごりに削られていた。確かに刺さりまくっていたナイフが一つ一つ、SHINGO★西成さんはじめ、昨日触れた音楽、MCでの言葉で取れた気がする。まだ血は流れてるけど、それをあったかい毛布で包んでもらって、まだ大丈夫だって何万回も呟いている。
どうせ使うなら、毛布みたいな言葉を使いたい。ナイフの方が効果ってたぶん分かりやすくて即効性があるのかもしれないけど、そうじゃなくてそんな簡単なことじゃなくて、毛布が良い。
音楽や、それ以外のエンタメ、ラジオで聴いた笑い声、真剣な声、そういう毛布をそれこそライナスの毛布のように抱えてきたから余計に思う。
私は毛布が良い。


もうこれだけで、かなりお腹いっぱいだったけど、そこからがCreepy Nutsタイムである。
空が暮れなずんできた。湿気を含んでるせいか真っ直ぐな夕暮れではなかったけど、むしろそれが良かった気もする。じわじわ夜に染まっていく。照明の色がはっきりしていく。そんな中、よふかしのうたが流れる。
何も正さないし、何もかもを映し出さない。そんな居心地の良さを、ここで昨日いっぱい味わった。それは何かを誤魔化してるわけじゃなくて、むしろ昼間の明け透けさだとか強引さだとかじゃ絶対出せないような核みたいなものな気がした。



音楽をやっている時のCreepy Nutsが好きだ。自分たちの音楽の格好良さを誰よりも信じている、彼らが好きだ。かましてんぞって顔してパフォーマンスしてくれる彼らが、私は心底、大好きなのだ。



あと、何度ライブに足を運んでも思うけど、DJ松永さんのDJが死ぬほどうまい。詳しくなくても分かる。まじでうまい。抜きがあんなに気持ちいいのすごいし、一度あれを生で味わってしまうと定期的に摂取したくなる。完全に合法の麻薬か何かだと思う。
そしてRさんの歌声と松永さんのDJプレイが会話してるみたいでそれが本当に好きだ。今回も途中もっともっと!と煽る瞬間があったけど、お互いのパフォーマンスでお互いのボルテージが上がっていく感覚が本当にすごい。
Creepy Nuts、あまりにも最高のコンビ過ぎる。



そして新曲の堕天もぶちかましてくれたわけですが、最高に気持ちよかったな。リハでやること急遽決めたとは思えぬクオリティ。まじでさすがCreepy Nuts過ぎる。
どんな表現もそうだけど、私は最新作が最高傑作って作り手が言ってくれるとわくわくするしすごく嬉しい。そして昨日の堕天でもそんなふたりの自信とか愛情が伝わってきて最高にニヤニヤした。
あとライブで初披露の曲の時のファンの空気感が好きだ。聴ける嬉しさがぶち上がって、どんどんその曲にのっていく、あの感覚が本当に好きだ。

その後ののびしろへ続くRさんのMCも良かった。というか毎度言うけど、Creepy Nutsのライブの曲振りは本当にマクラとして最高。天才。本当にR-指定っていうひとはすごい。言葉の遣い手として最強最高過ぎる。
続けてきたこと、それがこんな日に繋がること。そしてそんな毎日がこれからもまだまだ続くこと。日暮れに照らされて、青のライトがより綺麗に映える中で聴くのびしろは完全に背中を押してくれる応援ソングだった。
かつて天才だった俺たちへ、も締めのBad Orangezも何度も何度も音源を聴いたはずなのに「野音の音楽」で聴くと全然違って聞こえた。



特にBad Orangezに関して言えば、バックボーンがそれぞれ違う、歩いてきた道も歩いていく道も違うアーティストを聴いた後にあのMCと共に聴くと聴こえ方が全く違った。
嬉しかったな。
なんか、ああそうだよな、と何回も噛み締めてる。この感覚は、さすがに下手に言葉にした後の安っぽさに私が耐えられないからみんな聴いて欲しい。見て欲しい。
私は、少なくとも、あの瞬間、たまらなく嬉しかった。



身体は思い切り挙げて振ったおかげでギシギシだ。でも圧倒的な幸福感に包まれている。



ラスト、ラジオの話をした時の言葉を何度も思い出す。これからも変わらず、Rさんと松永さんの関係もスタッフさんたちとの関係も、リスナーとの関係も変わらず、末長く。その言葉をたぶん私はこれからお守りにしていくんだと思う。
寝れない夜に聴いて寝れなくてもいいかと笑った、だるい朝に聞いてげらげら笑った、最高の音楽にたくさん出会わせてくれた。そんな居場所の一つである「Creepy Nutsオールナイトニッポン」が私はこれまでもこれからも、大好きだ。
ハケながら、いつものお決まりの挨拶をしていくふたりがあまりにもらしくて最高だった。完璧にキメるのではなく、でもちょっとだけキメて。目の前の"実写版"ラジオが、あの瞬間も全部現実だと教えてくれた。
また特別なあの夜が増えたな。ずっとずっと、この日のことを覚えてられたら良いな。



電波の中の月曜深夜の溜まり場にああして集まれた瞬間のことを、私はきっと忘れない。



なんとまだこの最高のライブの配信を買えるよ!!!!!!