ちょうど週末、「会話って聴いててしんどくなるやつありません?」なんて話をしたばかりだった。自分が混ざっている混ざってない関係なく、なんでその言葉を選んだんだろう、その声音で話したんだろう、今のリズムだったんだろうを考えてるとたまに、話を聞き逃したり疲れたりする。逆に聴いていてずっと心地いい会話もあって、あれってなんでしょうね、みたいなオチのない話をしていた。
ふと目の前のステージで、ラッパーが握ったマイクに言葉を吐くのを観ながら思う。
私がこういうショーケースに来るのが好きなのはそんな中で「ずっと聴いていたい言葉」がたくさんあるからかもしれない。毎度ショーケースに足を運ぶたびに言ってるけど今回、生まれて初めてオールナイトで行ってみてより強く思った。
そこにある音楽が好きで、ステージの上で吐かれる言葉が好きで、なんだかその感覚がずっと癖になってるんだろう。
行くたびにちょっと自分の場違いさとか、どういたものかなあと迷うのに、結局行きたいと思うのは好きなアーティストがいるからという前提以上にそうした「そこでしか聴けないもの」が無性に好きだからだ。
もちろん、普段通い慣れたライブだってそうなんだけど、なんだかドームやアリーナ、ホールや野外とはまた違った音の響き方、言葉の響き方をするんだよな。
そんなわけで、Freak's'potの9周年のお祝いイベントに行ってきた。
思えばこの「Freak's'pot」に出逢ったのもそんな梅田Noonでのイベントで、確か、あの時「知らないラッパー、ユニットの音楽を聴くこと」の楽しさを知った気がする。
去年12月に行われたKZさんコーラさんのイベントでlily sansさんの音楽を初めて聴いて、この人の音楽をもっと聴きたいとSound Cloudで検索し、そうして聞き漁れば聞き漁るほど「また生で聴きたい」と思うようになった。そこから行った3月のイベント、からの今回。
もちろん、梅田Noonで梅田サイファーのパフォーマンスが観たいというのは足を運んだ大きな要因でもあるけど、何より、私はlily sansさんの音楽が好きだ。音楽をやる時の空気感や、Freak's'potはじめとする場の作り方が好きだ。
詳しくは知らない。だけど、好きなんだと思う。
だから今回も、とても楽しみにしていて、始まって案の定良いなあと思った。
やっぱり、lily sansさんの音楽は最高だった。luv.sicを初めて聴いたとき、「この曲の名前は何ていうんだろう」ってずっと思って後で探すために聞き取ったバースを脳内で繰り返し唱えたあの夜を覚えてる。
そして、そんな曲の曲名が分かったこと、どころか、きつい時何度も聴いて支えられた記憶込み込みで会場で、生で、その曲で上がれること。なんだか、そういうことひとつひとつが嬉しかった。
不思議だ。
特に前半登場したラッパーのことを、私はほとんど知らない。さらに言えば、境遇は年齢も性別もバックグラウンドも全然自分とは違う。
実際、フロアにいる時にはやっぱり声を掛けるのも躊躇うというか、いきなりこんな奴が声掛けても迷惑だよなあと考える。でも、ステージに立ち、ひとつひとつの言葉を吐いてる姿を見てる時は何故か「分かる」と思うのだ。そこで歌われてる内容が知らないこと、経験したことのない言葉でも、内容に耳を傾けたくなるし、想像する。
私は、あの感覚が好きだ。音楽を聴いてる時だけにあるあの錯覚が好きだ。
さらに言えば、そういう内容が「自分の話」だから、私はHIPHOP、日本語ラップを聴くとわくわくして仕方ないのだ。
それっぽい言葉の誤魔化しとかじゃなく、むしろそうならないために神経を削り心血を注ぎながら言葉を綴るひとがいる。
なんか、そういうことに私は毎度新鮮にびっくりして、そしてああ良かった、と思う。日常の中では聴けないような言葉にああそうだよな、ここにはあるよな、と心底ほっとするのだ。
今回、Freak's'potは9周年、しかもFreak's'は新EPを出したばかりということで、かなりのお祝いの会だった。
まだ知って約半年と少し。だから、私がこの9年間を想像することはできない。だけど、自分よりも歳下の彼らが、9年間、憧れを追いかけたり、自分のやってること、好きなことを「最高」だと信じてこの場を続けて作り上げてきたことって、かなり「ヤバい」と思うのだ。
だからこの人たちの音楽は格好いいんだな、とFreak's'の新EPを聞き直しながら思う。
言葉がストレートで、それぞれのメンバーの思いも乗ってて、また大好きなEPが一枚増えた。
そして、梅田サイファーのライブ。酸欠ギリギリになりながら手を挙げて「ああ、Noonの梅田サイファーが観れてよかった」と思った。特に「あのミラーボール」に照らされながら思った夜だったことはずっと、特別な思い出として残るんだと思う。
彼らも、それこそMCでRさんが言った通り、目まぐるしく色んなことが変わる中で、ひたすら「好きなものを信じて続けてきた」人たちだった。そしてそれを楽しそうに、かつ、自分が一番だと信じて、やってきた。それを感じる夜だった。
スペシャルゲストとしてぶちかましながら、曲を畳み掛けながら笑って手を挙げて踊って。
なんか、凄まじくて記憶がところどころだし、そもそもぎゅうぎゅうに押されていてステージ全体が見えていたわけじゃない。でもあの薄い空気とかめちゃくちゃな熱気とかの中で、好きな曲をたくさん聴けて本当に良かった。
明け方までのDJタイムで知ってる曲で飛び跳ねたり、知らない曲をついShazamで探したくなったり(電波入らなくて結局わからなかった)眠さと疲労でふわふわする頭の中で、夜を使い果たしてを踊ったこと、思いがけないパフォーマンスがみれて飛び跳ねたこと、全部忘れたくないけど、でも、忘れてもいいのかもしれない。忘れても、何も消えないわけだし。