えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

凄みがあるラジオ

凄みがある、と思った。
何かって「安住紳一郎の日曜天国」の話である。
ラジオが好きだと思ってこの3年。ラジオが好きだ、というと高確率でぶつかるのがこの「安住紳一郎の日曜天国」だと思っている。





偏見はあるかもしれないが、面白いラジオとして挙げられることも多く、実際に聴いたことはなくとも「安住さんのラジオ」というだけでこれはきっと面白いだろうな、と思う。
いずれ聴きたいと思いつつなかなかきっかけをつかめずにいたラジオととうとう出会った。






きっかけは源さんのゲスト出演。
私はそのラジオを久しぶりに出た(療養してたから)外を散歩をしながら聴いた。
めちゃくちゃに凹み、身体のしんどさも残る中、秋の名残が濃くなっていく空と風の感じに頬が緩んだ。
鬱々としながら過ごし、ひたすらに「楽しい」や「心地いい」が遠のく感覚。その上、自分だけ社会から切り離されていくような不安感に苛まれた数日分の鬱屈が取り戻されていく感じがする。



安住さんの心地のいいテンポのトーク、ほんの少し毒を孕んだ、なのにどっか優しい気がするコメントに自然とほっと息を吐く。すごいラジオだな、と思う。
結構傍若無人に、というと失礼だけど自由に走り回る印象すら受けるトークに意外なようにも納得がいくような気持ちで聴く。日常を切り取るテーマメールに寄り添ったり突き放したりする声に笑う。




そうして、源さんのゲストパートも親しみと敬意、茶目っけを感じるそれでともかく楽しかった。
その中で出てきたのが「成人式」の話である。
実は私が「安住紳一郎の日曜天国」の成人式のトークの話を聴くのは、これが初めてではない。
2022年放送のフワちゃんのオールナイトニッポン0にCreepy Nutsが出演した際、DJ松永さんがラジオが好きだというくだりで「良いだろ安住さんのラジオ!」と叫んだ松永さんが言っていたのだ。
成人式の回のオープニングトークがすごい、サボテンの話を絶対聴け、と。





その時の印象が大きく、いつか聴きたいなあと思っていたんだけど、今回、源さんも同じ「成人式の回が…」と挙げたことで俄然興味が増した。そんなにいろんなひとに愛されるその回のトークって、一体、どんなトークなんだ。
しかも、色んな、と言ったけどその二人が挙げるということは、もう、かなりの高確率で私も好きなトークな気がする。





そうして、Spotifyにも「安住紳一郎の日曜天国」がアップされた私はまず、その「成人式回」が具体的にいつ放送なのか調べた。そして驚く、なんと2009年1月の放送なのである。




一体、源さんや松永さんがいつそのラジオを聴いたかはわからない。だけど、かなりまえの放送が、今になってもなお、語り継がれているのは事実である。
ますます、どんなトークなんだ……?と興味が湧く。
しかし過去過ぎてないかもしれない、と半ば諦めつつSpotifyで検索すると、あった。








この回は、安住さんの成人式の思い出を語るオープニングトークから始まる。そして、実際に今、Spotifyで聴けるのもそのオープニングトーク部分である。
北海道から出てきた安住さんの成人式への思い、北海道には、帰れず、まだ知り合いも誰もいない埼玉の成人式に出たこと。
時系列でほぼほぼ一人語り、途中、アシスタントの方の相槌や笑い声がそのトークを加速させる。




凄みがあった。





凄み、以外の表現が浮かばない。面白くて笑ってしまいそうで、でもどこか心にぐっさりと刺さる。いつかの自分も地方から都市部に(と言っても関西だけど)(でも九州の出身の私にとっては大阪だって大都会だった)出てきた若者だったからか。
成人式こそ地元に戻ったけど、あの頃、必死に肩肘を張り、負けるか、と意気込んだ記憶があるからか。




そこで何が語られるかは、実際に聴いてほしい。
だけど、言えることは、その場で真剣に語られる、あの日の安住青年の出来事が、目の前で見たような、いや、なんなら体験したような気持ちになるあの回は、まさしくずっと愛される回なんだと思う。




ラジオは、声だけだからか。表情こそ見えないから、「理解りたい」と思うからか、それとも逆に「理解らなくても仕方ない」と思えるからか。

私はラジオで語られる誰かの鈍い恥ずかしさや遣る瀬なさが滲む話が好きだ。なんでか、聴いていると安心する。
そして、それをああして話せる人たちのことを、心から尊敬する。その声は確かに支柱のように支えの一つになるのだ。