えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

音楽ノイズから守ってくれ

音楽が楽しい。私の人生で「音楽を楽しむ」ことがあるとは、と思う。音楽が楽しい。
音の高い低いがいまいち分からなくて歌が下手なことに、楽器ができないことにコンパレックスがあってリズム感がないからノリ方だって分からない。
だからどれだけ何があっても「音楽」は遠い世界の話だったけど、ラジオを通してCreepy Nutsに出会ってそこから日本語ラップにどんどん惹かれてる、そんな気がしてる。


まさか自分が衝動的に音楽を聴くために電車に飛び乗る人間だと思わなかった。言葉という自分にとって身近な存在が橋渡ししてくれたからかもしれない。音楽で「合法的にトぶ」ことができるんだということに嬉しくて気持ちよくてあの空間にずっといたくて、そう思ってることにびっくりしている。





いたいのとんでけを絶望的な気持ちで聴いていた。
1バース目にずっともう良いかって思っていた。自分の中で渦巻く言葉の出口を教えてもらったような気持ちになる。
試してきたんだよ、楽しくいようとしたんだよ、やれることは、たくさん、試してきたんだよ。だけど、どっちに歩いていいか分かんないよ。
生き損ったらどうすりゃいい、という言葉にうずくまる。そんな頭の中で、いたいのとんでけ、と声が繰り返す。大丈夫だとは言わない、でも、いたいのとんでけ、と歌う。




テークさんのMes(s)を聴く、散歩の時、ずっとTHE TAKESを流す。聴きたかった言葉を考える。なんで、何を確認したかったのかをずっとずっとずっと、考える。


アルコールで頭を緩めてつまみ持ってくから、というバースを、私もそうしたかったな、と思う。自分のために誰かがつまみを持ってきてくれることも素敵だけど、そうじゃなくて。
strong、strong、strong、strong。
繰り返す言葉を確認したかった気がする。



そういや、日本語ラップの流れる空間の居心地の良さを教えてくれたのはKZさんでほぼ衝動に任せてアルバムを買っていた。それから繰り返し繰り返し、音楽を聴いた。感情移入しすぎて、頼り過ぎてどうなんだよ、と自分に毒付きそうになった時に飛び込んでくるバースに「フルコースかよ」と苦笑いしたりもした。




掴む手の先を、日本語ラップが教えてくれる。
友人が言っていた抱えてきたものを在るに変えても良いし、それで大事なものを失くしたりしないよ、という言葉を思い出した。



これはもうかなり個人的な話だけど、この数年ちょっと無理をしてきて、でも無理をするしかないというか突き詰めた先になんかないかと思ってきたし、まだ思ってる。
まだやれるともう無理だが昼と夜がひっくり返るたんびにやってくる。


そんなのは在っちゃ駄目だと思って深く深くに置き去りにして、結果、にっちもさっちもいかなくなって、どっちに歩いたらいいか分からなくなってしまった。それでも大丈夫だと言われるからああそうか、と諦めるしかなかった。




いきなり居なくなってしまった人をずっと思い出して身動きが取れなくなる日も
世の中に溢れる言葉を勝手に自分に向いたナイフに変えてしまって味わう苛立ちも
不用意な言動が頭から離れなくなって訳がわからなくなってることも



それでも、飛び込んだライブハウスで、クラブでみっともないような感情を確実に拾い上げてくれた。フロアで笑いかけてくれなくていい。ヘッズだなんて名乗れる何かもない。
勝手にあなたの音楽に言葉にのって踊る。



いきていたくない気持ちも
惨めさも寂しさも
救って欲しいわけじゃない、この感覚を誰かに「分かる」なんて言ってほしくもない。支えもいらんと思ってる。
でも、ずっと抱えとくには重い。持て余す。
そういうの全部、一旦さておいて、合法的にトぶ。心地よさに全部が浸る。
それから、言葉は届くことをすげえフルパワーで教えてくれる。信じさせてくれる。
チープで手垢まみれな言葉だけど、生きてけるなって思ったりした。安直に安易に、でも絶対的に。



そうだよな、ずっとそうで
誰がとか、何をとか
正しいも有名もバズも興味なくて
許せない放り出したい
下らないとすぐしそうになる冷笑や賢いふりを本当の笑顔にバカに変えてくれる。
そういうのを


本が
芝居が
ダンスが
映画が
ラジオが
日本語ラップ




放り出そうとする手を引く。まだこんな面白いものがあるという。
お前はどうする?と聞いてくる。
そうだよ、放り出して振り上げた拳を暴力に使って、解ってるフリなんてクソだせえ。

私にとっては面白いってそういうのだ。
諦めるなんて絶望するなんて、そんな簡単なことしてたまるか。
まだ書きたいことも喋りたいこともあって、聴きたいことも観たいことも知りたいこともまだまだある。





「音楽 ノイズから守ってくれ」

無理になったらイヤフォンしてスピーカーから好きな音楽流して電車に乗って、バスに乗って、私は面白いに会いにいく。