えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

佐久間宣行 ずるい仕事術

仕事って好きだろうか?
私は好きだ。
好きなんだと最近心底思う。「仕事やだよねー」と言われると相槌を一瞬迷う程度には、仕事が好きだ。休みも好きだ。休みをめいいっぱい楽しみたいのでやっぱりそう思うと仕事はあってくれた方が具合がいい。

仕事は1日、あるいは週の大半を使ってやるからどうせなら楽しみたい。私にあるのは使命感だとか仕事を好きだと思う感情だとかではなく、ただただそれだけだ。自分の人生を最初から最後まで面白がりたい私にとって仕事が楽しめないということは1日の大切な時間の浪費になる。ので、単に負けず嫌い的に毎日を面白がろうとしているだけなのである。



とはいえ、じゃあ仕事だけに邁進してたら良いかと言われるとそうでもない。そもそも仕事以外に好きなものがたくさんあるからというのは前提として、それ以上に、そういう私を心配してくれる人たち、というのがいるのだ。
その事実を私はたぶん、4.5年かけて理解した。それは自身に向けてもらった心配やお叱り、自分が大切なあの人が自分を削って削って仕事をしていることで覚えた不安の先にようやく掴んだ事実だ。


まあでも事実だけ知っていても仕方がないわけで、その事実を踏まえてどうするかが大事なんだけどうまいこと調整って難しい。そう思っていた私にとって、佐久間宣行さんの「ずるい仕事術」は物凄く出逢って良かった1冊になった。



この本は佐久間さんの20年以上の社会人生活で考えてきたこと、気付いたことを62の方法としてまとめてある。それをさらに6章に分け、それぞれジャンルごとにまとめられているので通して読むのも面白いし、読み返したい時にその時の気分・状況で好きなところを開くのも楽しい。


私が好きなビジネス書は、その人の仕事への目線が見えてくるものである。こうしたら良いよというHow toの有用性はもちろん大切なのかもしれないけどむしろ、どちらかといえば良いな、と思える人たちが仕事を通してみてきたもの考えてきたものをまるで居酒屋や喫茶店で聴くような気持ちで読めるものに出逢うともれなくテンションが上がる。
そしてこの本は、まさしくそんな1冊なのだ。



例えば、人間関係編。
「褒める」は最強のビジネススキルから始まり、「陰口はコスパが悪い」、会社に「友だち」はいらない、「付き合いの悪いヤツ」でいいと続く一連の文章があまりにも好きで何度も読んだ。
仕事をする上で、いや仕事だけじゃない。何か自分がしたいことを実現しようとするとき、そこで友達や恋人を作ろうとする他人とぶつかることが今まで多かった。今思えば、私に幼すぎるところはあったし、自分と違う目的の人を間違ってる、ダメだ、と決め付けて拒絶していたのはあまりにも人としての器が小さすぎるけど、一方でいまだに、少なくとも「私は」友達が欲しいわけじゃないんだ、と切なくなることがある。
私もあなたの目的を否定しないから、どうかあなたの目的も私に押し付けてくれるな、と切実に願ってしまう。


そんな私は、佐久間さんのこの一連の章にそうだよな!と頷いたり、ああ、そうしたら良かったのか、と目の前が開けるような気持ちになったりした。
そしてそれは単に私が共感できたから納得した、というよりかは佐久間さんの語り口の柔らかさの効果だったように思うのだ。


佐久間さんは、ラジオもそうだけど喋り方が丸い。笑わせることが好きなんだろうな、面白いことが好きなんだろうな、と思うし、かつ、誰かを傷付ける手段をわざと選んだりしないのだということに安心する。

そしてそれがただ優しい、だけではなく絶妙な計算と「絶対面白い自分の好きなものを作る」という強さのようなもので成立しているから私は最高に好きだし、かっけーと思うのだ。
そして私はかっけー、と思うと、私も負けねえ!とするので、もう、そりゃ、この章を何万回も読むに決まってるのである。



そうした自分のため、とあとは何かを好きだと思うことの見ていて心地いいものがすごいバランスで居る佐久間さんの話が本当に好きだ。



仕事は手段だ。仕事が目的になって自分を削ってしまえば、悲しむ人がいる。でもだからこそ最大限に「たかが仕事」「手段」と思いながらしっかりそれを面白がりたい。できたらそれが誰かの嬉しいや楽しいに繋がったら良い。
そう思っても良いんだということ、そしてその方法のヒントに出会えたことが私はこの本を読んで得られたことの1番嬉しいことである。



最後に。この本を読みたいと1番思ったきっかけの「はじめに」の文の大好きな締めを引用したい(ちなみにこのはじめに、佐久間さん自身がTwitterで全文掲載しているのでみんな読んで欲しいし、できたらそのまま本も読んで欲しい)

面白いものが世界に増えたら僕の人生が豊かになる。

そして、あなたの仕事で世の中がおもしろくなったり
便利になったりしてくれれば、
僕の人生も楽しくなるので最高です。




面白いや楽しいを求め続けるこの人が仕事にこうした言葉を綴っていることは、社会人をしている私にとって、とんでもない希望の1つなのだ。