えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

大丈夫倶楽部

ここ2日、カフェオレを淹れるのにハマってる。淹れる、と言っても適当な量のホットミルクを作って蜂蜜を入れ、インスタントコーヒーを適当に振りかけ、お湯を注ぐだけだ。
お手軽だし安上がり。
でもそれを作ってお気に入りのソファに体育座りしてずびずびしてると「お、いいぞ」と思う。


それはこの漫画の言うところの「大丈夫」の状態なんだと思う。


日々、大丈夫の研鑽に励む花田もね。そんな彼女が出会った「芦川」とともに「大丈夫の研鑽」をする日常を描いた『大丈夫倶楽部』という漫画がある。


マンガ5というサイトで掲載されているこのWEB漫画が期間限定で全話公開になっていたので一気読みした。


最初はなんとなく絵が好きだな、という気持ちだけだったのに、その漫画の中に溢れる「大丈夫」に気が付けばスクロールする指が止まらなくなった。


大丈夫、と思ったひとから出る「安定物質」。
日々の大丈夫、を研鑽していくもねたちは日常のなか、一つ一つに目を向ける。
例えば、炊き立てのご飯とか。
片付けは簡単なことから済ませる、とか。
コンビニのちょっと高いおにぎりとか。


そもそも、大丈夫、を探すのはこの大丈夫、がかなり曖昧というか、すぐにいなくなってしまうものだからだ。
たぶん、そんな人ばかりじゃないんだと思う。
しかし私は、もねの「大丈夫じゃない状態」という響きに首がもげるほど頷いてしまった。

誰かに助けを求めるほどじゃなかったりとか、大袈裟に騒ぐほどでもない程度の「不具合」。
なんかやだな、が積もりに積もり、自分のケアもしたくなくなって、誰かのことも考えたくなくなって、そんな自分に嫌気がさして、みたいな、それです。ザ・負のループ。止まらない大丈夫じゃない状態。


もねや、芦川さん、そしてそれ以外に出てくる登場人物たちはみな、大丈夫と大丈夫じゃない、を繰り返す。
繰り返しながら「大丈夫」を見つけてはうなずき、スタンプカード(大丈夫を発見したら押す)にスタンプを貯める。



何がこんなにささったか、と言われると難しい。
心癒されるハートフルストーリーというアオリ通り、たしかにそんな要素もあるんだけど、でも私にとって「癒しの漫画」と表現してしまうとズレるのだ。


この漫画にとって、大丈夫ともう一つ軸になる言葉がある。

「人知は未だ世界の内に在り」
「されば知るべし、学研するべし」

たぶん、私はこの言葉が大好きなのだ。
知ること、学ぶこと、考えることは世界の輪郭に触れることだ。
そしてこの言葉は同時に「分からないことがあること」を当然だと頷いてくれる。


分からない、は不安だ。知らないことは怖いことだし、理解できないことは時々、嫌悪に繋がる。
だけどそれをそういうものだ、と思いながらやっていけるのは、なんて素敵なことだろう。
そしてそういうものだ、は「大切なのは、分かろうと勉学に励む事をやめない事」と続く。


もねの「大丈夫」の研鑽は「大丈夫探し」はその知ろうとし続けること、なんじゃないか。
それをこんな風に柔らかく楽しげに描いてて、だから私はこんなに嬉しかったんだな。


実は冒頭のカフェオレはそんなに美味しいわけじゃない。めちゃくちゃ美味しい!ではないけど、なんとなく「まあこんなもんで」と笑える気楽さが好きなのだ。ちょっと手抜きの、だけど私の日常に必要な「大丈夫」が増えたことが嬉しい。


大丈夫倶楽部が、そんな私の日常の中の嬉しい、の瞬間に名前をくれた。知る事のきっかけをくれた。
ああすごく嬉しい。

見えない、分からない不安を一旦傍に寄せて、見つけた大丈夫、にスタンプを押して。そういう「やっていきかた」を私は今日また一つ見つけたのだ。

そう思うと、嬉しくてたまらないので心の中の大丈夫スタンプカードにひとつ、スタンプを押そうと思う。