えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

恋はDeepに

恋愛ものが好きではないと思っていた。
その理由はいくつかあるけど、一つ、大きなものはハッキリしてる。恋愛ものは自分の中の地雷を思い切り踏まれる可能性が高いのだ。
その地雷とは「私と仕事、どっちが大事なの」というそれである。
定番といえば定番だけど、この展開、まじでしょっちゅう出てくる。仕事、の部分は他のものに置き換えてもいい。
とどのつまり、ヒロインにしろヒーロー(って言い方でいいのか、いつも迷う)にしろ、自分と相手にとって大切な何かを天秤にかけ、自分への愛情を確かめようとする展開が苦手なのだ。直接聞かないまでも本人の中で「私より○○の方が大事なんだ…」と拗ねたり落ち込んだりするのもかなりグレーゾーンだ。
それでどんだけ感情移入して見ていようがうっせー!!!!!とちゃぶ台をひっくり返してしまう。


そもそもそれ比べるべきものじゃなくない?とイラッとしてしまうし、そうなるともう、別れろ別れろ!と暴れ回ってしまうので、以降の物語に集中できなくなるのだ。



しかし、今期ドラマあるいはそれ以外でも観ている映画・ドラマを振り返ると意外に恋愛ものを観ていたし、好きな作品もかなり多い。
さすがにこうして今期の恋愛ドラマを楽しんでいるともう「恋愛ドラマが嫌い」は成立しないだろうと思った。
そうか、きっと、私はなんだかんだ、恋愛ドラマが好きなのか。多分その中で好きなものと苦手なものがあるだけで。


それをハッキリ認識できるようになったのは、今期様々ある恋愛ドラマが一つのものを描いているように思うからだ。




そのテーマとは「違うのに好きってなんだ?」ということだ。
人が人に惹かれる時は色んなきっかけがある。例えば「私とあなたはこんなに似てる!」ってことだったり。
と言いつつ、実際、相入れないからこそ燃えるってことだって昔から言われているしこのテーマは何も今回に限ったことじゃないかもしれない。まあ、それはそれとして。少なくとも、私は今期のドラマたちを通して、そんなことを何度も何度も、考えた。
前提として、嫌な言い方をすると他人といるっていうのはリスクがある。傷付くリスク、がっかりするリスク、そして傷付けるリスク、がっかりされるリスクだ。
それでも、一緒にいたいと思うこと。そしてそう思ってもなお、違うこと。


そして、恋はDeepにはその「違う」をひたすら突き詰めた話だ。
海を守りたい渚海音、海にリゾートを作りたい倫太郎。価値観も違う、やりたいことも真逆、ついでにいえば、種族も違う。
そんなふたりが、惹かれあっていく。



ところで、私がこの通称恋ぷにを楽しみにしていたのはもう一つ理由がある。

MIU404完結後、ゲスト出演をしていた菅田将暉さんのオールナイトニッポンがあったからだ。
その放送内で、綾野剛さんは「ラブコメをやってみたい」と口にされていた。
今までも恋愛ものをしてきたけど、どちらかというと重たい話が多く、もっとそうじゃなくて、フレンチキスをするようなラブコメがやりたい。
正確な言葉じゃないが、そんな話をされていた。
私は、それを聞きながらわくわくした。たしかに、綾野剛さんが「ラブコメ」という世界をどう生きるのか、興味があった。



私にとって綾野剛さんは、愛の人だ。
しかもそれは愛が綺麗なものだからということではなく、なんというか、もっとずしりと重たい。でも、それはもちろん嫌なものではなく誰かに押し付けるものではない。ただ一本大きな木を見つめるような気持ちになる。


この間、コウノドリの感想の中でも考えていたけど、

いつかじっくり自分の中の綾野剛さんという人を掘り下げてみたくもある。
それはさておき。


重たいドロドロとした愛ではなく、フレンチキスが似合うようなラブコメを生きる綾野剛さんはどんな姿だろう、どんな表情をするんだろう。とても、楽しみだった。
だって、命懸けの極限の状況になくても、人は人に惹かれる(そしてそれは、私たちの日常と地続きでもあるし、奇跡でもある)
そこに生きる綾野剛さんの姿はきっと、すごく好きな気がしていたのだ。


そして、実際「ラブコメ」である恋ぷにの中で生きる綾野剛さんはとても魅力的だった。
全力で、海音に惹かれ、好きだと表現するところも。それを伝えることも。
あのキッチンでわかめを食べるシーンが大好きだったんですよ。
好きだから、理解したい。同じことを経験してみたい。

それでも、ふたりはそれぞれやりたいことを譲ったりはしない。そこが、ともかく、好きだった。
でもじゃあ一緒にいるために、どうしたらいいのか。試行錯誤する。その中で相手を知ろうとする。
(もっとも、正直その描写がもっと双方向的で丁寧だったらより好きだったなあとか思わないところがないわけじゃないけど)(どちらかと言えば、倫太郎からの歩み寄りが多かったし)
私と○○どっちが大事なの?なんてことは彼らは言わないのだ。だって、どっちも大切だから。


ところでラブ"コメ"ってなんだ。
ブコメディということは分かる。そして私はコメディが大好きだ。
だけど、ラブコメって、実は結構難しくない?と思うのだ。
恋ぷには荒唐無稽な設定も多く、ある意味でそれを「真剣に」演じすぎた、重く演じすぎたから面白くなかったんじゃないか,というのを考える。
でも、たぶん、私は真剣だったから、好きだったんだよなあ。
もちろん、ツッコミは入れてたけど。でも、誰も彼もが真剣で、恋心にしろ彼ら自身の持つストーリーにしろ、心の底から信じて向き合って、物語は進んでいたように思う。私は、それが好きだった。



だって誰かをまっすぐ、恥ずかしいくらいに好きだと思うことはすごく、素敵なことじゃないか。



成功作!と言われるとうーんと正直返してしまうけど、駄作!というには、彼らに愛情を感じてて、それはまあ確かにキャストが好きだからというものもあるけど、でも、それだけじゃないと思うんだよな。なんなんだ、これ。これがぷにってやつなんですか。