えす、えぬ、てぃ

お芝居の感想など

民王

政治の話って好きだろうか?
こう聞かれて、人によっては日々うんざりするようなメディア…テレビに限らず、ネットも…に流れてくるニュースを思い出すかもしれないし
人によっては歴史小説、あるいはSFでの架空の国での描写を思い出すかもしれない。

ちなみに私はどっちもそこそこ楽しむし、そこそこ身構えるスタンスだ。するならするけど、所構わずしたいわけじゃなく、場合によってはたまに読み飛ばしてしまう。


なのでもちろん、今回のこのブログもこんな書き出しにしたのはわけがある。
民王を観たのだ。



民王は2015年にドラマ化された池井戸潤さんの作品を原作とする話である。
内容としては、100代目総理大臣になった武藤泰山とその息子、良いやつだけどともかくバカな翔の中身が入れ替わってしまう、というドタバタコメディだ。

そう、コメディなんですよ!!!!
私、実はあまり池井戸潤さんの作品をそんなに読んでないどころかドラマもあまり観ていない。完全に乗り遅れて、まあもう乗り遅れたならいいか、とスルーしてきた。
なので、今回民王を見始めて驚いた。めちゃくちゃコメディ。思った以上にすげえ面白い(念のため言っておくと笑うっていう意味で。決して今まで見てなかったのは面白くなさそう、という理由ではない)し、主軸と関係ないようなエピソード・小ネタをガンガン入れてくる。なんなら菅田将暉さんが息子、翔くん(といいつつ話の中での大半は中身はお父さんな訳だけど)を演じているのもあって、仮面ライダーWのネタをガンガン入れてくる。
これ、当時家族で観てかなり楽しんだご家族も多いんじゃないの。なんだ、めちゃくちゃ素敵じゃないか。


コメディなんだ。もう、本当に、物凄く徹底して。
そしてこれも度々言ってるんだけど、コメディは強い。もう、本当に、強い。
好みの話ではあるけど、なんせ、だって、笑うんだ。ひとが。コメディを観ると。
それって物凄いことじゃないだろうか。


もう本当に、各役者さんの芸達者っぷりにワクワクしてくるわけです。全8話、ずーーーっとワクワクしっぱなし。
普段ドラマを観るのがそこそこ遅いタイプの私も思わず一気見してしまった。ありがとうAmazonプライム
コメディを演じてるひとのエネルギーって本当にたまらないものがあるわけですが、
更にそれに「入れ替わり」ネタを入れてくるのだ。
しかも遠藤さんと菅田さんが、です。
年齢もキャラクターの性格も全く違うひとが、それぞれ2役を演じるように「入れ替わり」を演じる。もう、この、ワクワク感!すごい!ごいがない!でもだってそうなんだもん!!ワクワクしたんだもん!!!!!!

本当に不思議で、菅田さんがだんだん遠藤さんに、そして遠藤さんが菅田さんに見えてくる。
その上に、この演じた相手の芝居を受けてのお芝居の、奥行きというか、なんでしょうね、ほんとうに無限の広がりみたいなのが観れちゃうんですよ…。


このドラマを見ながら、同じ骨格・パーツを持っていてもこんなに表情筋の動き方でまるで違う顔になるのか、ということを何度も何度も考えていた。
なんだろう、もう全然具体的な話にならねえな。でもなんというか、本当に、最近こういうドラマを観ながら「あーーーーお芝居が好きだ!」って思うのが最高に楽しくて幸せでしかたなくて、民王は本当にそれを味わいまくれたのですごくすごく、良かったんですよね。
その上、何度も言いますが、コメディですから。まじでわりとずっと爆笑してましたからね、私。ひとりで。仕事終わりだろうが休みの日だろうが見ながらひたっすらげらげら笑いながらずっと夢中になっていた。


そう、コメディってすごい。コメディは疲れててもなんとなく笑えたり楽しめたりする。分かりやすくて、げらげら笑ってて、そうしてるうちに話に夢中になるのだ。
「分かりやすい話」ってすごい。
分かりにくいことが羨ましくなったり、難解なことに憧れたりすることもないでもないが、
それでもやっぱりいつも「分かりやすいってすごいなあ!」という気持ちになる。


民王は、池井戸潤さんの作品らしく(イメージの話)(よくよく考えると半沢直樹のこととかも「コメディ」なのかもしれないので本当にイメージ、でしかないな。ちゃんと観れてないけど)政治や経済の話が絡まって熱い人間ドラマが繰り広げられる。


今回、なんせバカな息子が総理大臣の中身になっているから色んな「難しい話」や「ややこしい話」をかなり噛み砕いて展開される。
更にまさしく今就活生である彼がその目線で言う「なんで?」「どうして?」は、庶民の……っていう表現もなんかやなんだけど……目線とかなり近かったりする。
こういう書き方をすると凝り固まった総理大臣をはじめとする政治家に物申す!みたいな話に聞こえかねないけれども、
もちろんそれだけじゃなく、総理大臣側の武藤泰山の側から見えた「世界」もしっかり描く。
どちらかが「正解」の勧善懲悪の話ではなくて、「どうして」の話を丁寧にかつ、めちゃくちゃコメディタッチで描いていくのだ。

それがまた、本当に、心地いい。


こんなご時世なので、どうしても色んなことを表す時にちょっと怒ったような言葉になったりするじゃないですか。
怒ったような、っていうとちょっと幼い言い方になってしまうんだけど刺々しいというか、
隙あらば人を陥れる言い方だったりマウントの取り合いだったり、
そこまでいかなくても負の感情の方が目につきやすい。
そして、どうしてもそれは「世の中」に向けられて、更に言うと「政治」に向けられるじゃないですか。


だからだんだんと世の中、や政治、から目を背けたくなってくることもまあ、あったりする。
ダメなんだけど。だめというか、目を背ける背けないっていうか、ただそこにあるだけの話で、自分事なんだけど。
でも、やっぱりこう負の感情って引っ張られるしついでにいうと「考えてもなんにも変わんないじゃん!」みたいな無気力感になったりもするし。


私が冒頭、『するならするけど、所構わずしたいわけじゃなく、場合によってはたまに読み飛ばしてしまう』と書いたのは
それが押し付ける・相手を言い負かす、ためにするならただただ疲れるし場合によっては悲しくなるからだ。
ただ、民王はコメディなのだ。


なんで汗水流して稼いで治めた税金が困ってる目の前の人に使えないんですか?
なんで同じ政治家同士で足を引っ張り合うんですか?
それって、ただのプライベートじゃないですか?



そう、真っ直ぐに問い掛けるそれは相手に対して言い負かそうというよりかは「彼の言葉」だ。
それを笑い飛ばそうが、そうだなと思おうがそこから先は「私次第」だな、と思う。


そして「私」は、明日が良い日になればいい、と心の底から思った。


民王は6年前のドラマなんだけど、台詞の一つ一つに、つい今の状況を思い出した。政治への不信感、というとそのまんまになるけど、まさしく、なんで、どうして、の気持ちがそのまま台詞になって出てきたような気がする。
そしてその中で、泰山や翔くんが、一つ一つ問題に立ち向かっていく姿は清々しかった。ドラマだから解決するのだ、と言われればそれまでだけど、それでも、なんかいいじゃん、と思う。
その姿を格好いい、と思えることに安心する。


受け取りやすくするための努力をするひとが好きだ。
相手が受け取れるように心を尽くすひとが好きだ。



少し話はズレるけど、「受け取りやすい」は同時に気をつけなきゃいけないとも思っていて、
「そう思わせるための誘導」だったりする可能性も十二分にある。そうかどうか、の分かれ道はもう、考え続けることしかないんじゃないか、と思うんだけど。
感想を書きながら「面白かった」「分かり易かった」は同時にそういう話になってしまわないか、と頭の隅で思っていた。
でも、別にこれが正解って話ではないと思うんだよな。もし民王が正解、を示しているとしたらそれは、「人を大切にすること」そのただ一つな気がする。


そして何より民王は、まず面白い物語を作ろうとして、その先でもっと良い……人を大切にする世界になったらいいのに、と紡いだ物語なような気がして物凄く嬉しかった。


去年からずっと思っているけど、面白いものが作りたいという熱意で作られた話ってなんでこんなに元気が出るんだろうな。これも、主観の話でしかないけど。
すげー元気になってしまったな。
その上まだスペシャルやスピンオフが残ってるからすごくワクワクしている。



そしてほんの少し「翔くんより歳上なんだし、ちょっと頑張ろうかな」なんて思う。まずは、誰かとしっかり話をするために、相手に受け取りやすく伝えようとするところから。