米カンパライブのコンセプトが好きだ。
初めて知ったのは去年の「Creepy Nutsの日本語ラップ紹介ライブ」の際のSHINGO★西成さんのMC。ライブのパフォーマンスに真正面から食らい、その中で聞いた「俺らが歌うから米持ってきて」の言葉にビビッときて友だちとふたり、お米を抱えながら行った。
広々とした広場とキッチンカーをはじめとする出店、祭りの屋台、そしてそこで揺れて踊るお客さんたち。
HIPHOPに馴染みがなかった友だちを連れて行ったという緊張感は途中から嘘のように消えた。
そのピースフルでハッピーな空間が癖になり、今年も今か今かと待っていたし、また別の普段はHIPHOPもレゲエも聴かない友だちを連れてまたライブへと足を運んだ。
そうして過ごしながら、私はHIPHOPを聴くのが好きだと思う。イヤフォンから流れるのを聴く時も部屋でひとりきりの時に流して踊るのも好きだ。
だけど、結局1番好きなのはこうして、生で目の前でかましている人を観ながら、そして何より楽しそうなお客さんを観ながら聴くのが本当に、心の底から好きなのだ。
今回の目当ては775さんとそしてもちろん、SHINGO★西成さんである。
時間を合わせて会場に行けばフリースタイルでゲームSEをサンプリングしながらセッションしているパフォーマーの方が。
KEIZO machine!さん、冒頭から見てたら良かった!と思うほど、ステージパフォーマンスが最高に良い。
私が好きなステージパフォーマンスは「外」に向いてるパフォーマンスかもしれない。
そんなことを即座に会場にいるひとを盛り上げ、巻き込みつつ進行する姿に思う。
それから775さんのステージが始まり、出てくるだけでステージ上でぱちぱちと跳ねるエネルギーに嬉しくなる。
去年の夏に初めてパフォーマンスを観てからあのエネルギーが癖になってる気がする。
ハスキーな色気のある声で煽りながら歌い上げる姿、見れば見るほど、格好良くてたまらなく好きだ。
あと、あの「あおーん!」と吠える姿が本当に好きだ。なんでだろうな、観てるだけ、聴いてるだけで楽しくなる。
そして今回初聴きになった「処女の少女」のパフォーマンスが本当に凄かった。
アングラな言葉も見事に歌い上げた上でのかまし、あのステージのパフォーマンスは、本当にすごくすごく、好きだった。
「自分のまま」でいることの誇りがある音楽である、というのが私がHIPHOPやレゲエに触れるたびに最高だな、と思うところだ。もちろん、私解釈だし、そんな単純な話ではなくていろんなしがらみも逆にあるらしい、ということもなんとなく分かってきた。
分かってきたけど、いや逆に「わかってきたからこそ」あの「処女の少女」を歌い上げる775さんが格好良くてたまらなかった。
間の輪入道さん、GADOROさんは残念ながらちょっとお酒とご飯が恋しくなり離脱。
でも、フードコーナーでもしっかり聴こえる音楽にちょっと小刻みに身体を揺らしつつお酒を飲んで美味しいものを食べるのは、たまらなく贅沢だと思った。
ちょうど、唐揚げとポテトのセットを買うときに目の前に並んでいた中学生くらいの男の子が「この音楽な、輪入道って人のなんやで」って言ってる、その時の表情が忘れられない。
楽しくて祭りみたいな空気の中、それぞれがそれぞれの好きなもので楽しそうに過ごしてる。
私はそんな幸せな空気の中で美味しいものを食べつつ、友だちと話す。普段、HIPHOPもレゲエも聴かない友だちの感想に喜んだり、普段思ってること考えてることについて話す。それの、なんて楽しいことか。ついついお酒も飲み過ぎるし、食べ物だってたくさん食べたくなる。
好きな音楽の中で、美味しいものを好きな人と食べるってそれだけですげー幸せなんだよな。
そうして向かったSHINGO★西成さんのステージ。
くれなずんでる空を見上げながら、綺麗だなって思った。ナイフみたいな言葉でなくて、言葉が凶器になることをよく知るひとが、毛布のようにと綴った言葉に、耳を傾けて手をあげる。
ゴンフィンガー、という文化が好きだ。自分が好きだと思った言葉に手を挙げることで好きだ、という気持ちを表せて、そして何より、最高!とぶち上がる気持ちを乗せられる、それが本当に好きだ。
私は元々、HIPHOPのゴリゴリのヘッズではない。
思えば、都度都度「ラップ」をいいなと思う機会はあれど、本格的に聴き出したのはここ数年で、そんなわけで見た目からは全然聴きそうにない、と言われる。とはいえ、そもそも音楽と人間性は切っても切れないものだとはいえ、「この音楽を好きな人はこういう見た目」という決まりなんて当然ないんだし、どんな人間にも、いろんな音楽の門は開かれてて欲しいし、それが「HIPHOP」となればますます、そうは思うんだけど。
だけどやっぱりダボダボ服でも派手でもなく、なんか、微妙な「そんじょそこらにいるイカさない」私はヘッズという顔もできずに中途半端にへらへらする。
するんだけど、ライブの時は違う。
好きだと思う、手を挙げる、何度も聴いたバースを口ずさむ、飛ぶ、跳ねる、拳を挙げる。
そうしている中で、普段の日常ではすれ違うだけだけど、なんならそもそも互いに知覚し合えないかもしれないと思う。そんな人たち同士が同じ音楽に心を寄せてそれぞれが楽しそうに過ごしてる。
いかつい人も家族連れも私みたいな人もギャルも、おじさんも全員が楽しそうに手を挙げている。その光景が、私はすごくすごく好きだ。
そういう幸せな場所で、好きな音楽を好きなひとと聴いてる。それが、心底嬉しかった。
そして、その場所にお米を持って集まれたことが、やっぱり幸せなのだ。