えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

Today is Fine day

行ったことのない場所を懐かしいと思った。
思い出すたびにふくふくと幸せになるようなそんな舞台に出逢った。
お芝居を観に行くと時々そういうことがあって、理屈を通り越して抱き締めたくなるみたいなそんなお芝居に出逢う。と、もう、ひたすらそのことばかり繰り返し思い出してしまう。

Today is Finedayはそんな私がお芝居が好きな理由が詰め込まれたみたいな舞台だった。


あらすじ(corich公演情報より)
田舎の商店街を舞台におバカ登場人物たちが語る、心温まる小さなメッセージ。
団子屋を営む桜井将人は、父・庄治に一つの報告があった。
…結婚するということ…
一方、「桜井不動産」を経営する庄治にも、将人に一つの話があった。
…自分の会社を継いで欲しいこと…
しかし父と息子の再会は、なんと10年ぶり。まともに話ができるのだろうか?
そんな大事な日に巻き起こるひとつの事件!
久々の父と子の再会は…「嵐」の始まりだったか!?

『親の心子知らず…でも、親はなくとも子は…でしょ?』

親と子の関係をテーマに家族の想いをドタバタストーリーで綴るC2コメディ決定版!


前説が初日を観たため、遠藤さんと淳さんの前説だったわけですが、ともかく緩い!漫才みたいなのに緩い!漫才っていうか、面白くてテンポの良い会話をする人たちの会話を見てる感じ!
この時点で、楽しみ度はぐんぐん増していく。なんとなくだけど。あ、でも途中、劇中みたいな会話してるってやりとりがあって、あ、このままな空気感なんだ!とほっこりしたのもある。

そっからは、ノンストップなわけです。
これでもか!ってくらい笑わせにかかってくる。コッテコテなギャグも含めて、ともかくひたすら笑わせてくる。
前説で笑うとこだなーって悟ったら少し増しで大袈裟に笑ってくださいね、って謂れだけど少し増しで、なんてするまでもなくわりと腹筋痛え!ってなるくらい笑うことになる。ちょっと笑い声うるさくないかなって途中口抑えたくらいだった。


笑いは人それぞれ好みがあると思う。ブラックジョークがダメな人もいれば下ネタがダメな人がいるように。
もちろん、C2さんの笑いも好きずきが全くないわけじゃないだろう。ないだろうけど、色んな人に届くような柔らかい(いや笑いの威力としてはそんな柔らかいなんてものじゃない、油断すると腹筋をやられる)笑いに満ちていたように思う。
アドリブはほとんどないらしい、というツイートを見て、ははあなるほど、と思ったりした。
これは完全に好みな話だけど私は完全なるアドリブ、が苦手だ。役者が自由にボケますコーナーが本当に、なんとなく、もぞっとなる。分かってる、好みの話だ。
なんだけど、あーだからこのお芝居の笑いは好きだったんだなあ、と思った。アドリブがまるっきり嫌いなわけじゃないしこれまで、私だってアドリブにきゃいきゃい楽しんだことだってある。
なんとなく、お芝居と地続きのアドリブなら好きなんだろうな、と思う。お芝居の延長にある即興やアドリブは楽しい、そこに役者さん、を出されるとしんどい。
それはさておき。
ともかく、Today is Finedayは愛に満ち溢れた笑いだったのだ。
いやもう。
本当に、あ、笑うって楽しいー!ってなった。楽しい、笑うのめっちゃ楽しい。
なんか、あ、これだわ。私があのお芝居好きな一つの理由。楽しかったのですよ、ひたすら笑うのが。
役者がここは笑うシーンですよ、って雰囲気出すので、って前説で言ってはったけど、
なんか、それ。それです!
楽しかった!遠慮なく笑わせてくれるし、楽しいでしょ!!ってしてくれるし、それが本当に楽しいし。なんか、楽しいことってすごいよね。そしてそれが役者さんも私たち観客も同じって最高よね。
あーあの空間が好きだったのそれでした。感想書いてまとまった。
本気で笑わしに来てくれるし、それが物語と浮いてないし、私たちにとっても楽しいし。
楽しかったです、本当に。
そう、帰り際、色んな役者さんに目があうたびに楽しかったです!ありがとうございます!を繰り返し言う不審者になってたんですけどね、
なんか、本当に、嬉しかったんですよね。


楽しいことは、優しいことだと思う。

さて、そんで、物語の話を少ししたくて。
あの物語、出てる人みんなのこと好きになるね。なった。


将人さんは、もうね、好きになってしまうでしょう。こんな、こんな、ね。
あーこの人は良い人だなあってしみじみした。あんな愛のあるツッコミをする人に悪い人はいない。
し、なんか、あーこの人はみんなが好きなんだな、と思ってそれが相乗効果でね、ずっとね、嬉しかったわけですよ。すっごく素朴なんだけど、それがいい。聴く人なんだなあ、と思ってて、思ったので、日によって彩りも変わるんだろうなあ、とにこにこした。好きなお芝居だった。


お父さんの夢さんは、もう、堪能ですよ。
まず笑いが本当に好きなんだな、っていう楽しさもあるんだけど、それ以上に、ああこの人は父親なんだなっていう。
あの潤む目や感情が滲む目をあんな間近で見れたことは贅沢以外のなにものでもないと思う。
もちろん、芝居なのだ。作ってきた作り込まれたそれなんだけど、あのお芝居は夢麻呂さんにしかできないんだよな、かっけえ。好き。


松嶋のお母さんは、塩梅がすごく好きで。いるよね、ああいうお母さん。お母さんってついつい愛情深く描かれがちで、いやもちろんこの松嶋のお母さんも愛情深いんだけど。
ただ、なんか、リアルな雑さもあって。それがね、たまらなく好きだった。
リアルな雑さがあるからこそ、抱き締めたり心配する仕草が母親そのもので、なんか、実家に帰りたくなる感じすらした。


松嶋麻弥さんは、え、あれ、あ、わかはさんだ?!!って途中パニックになった。わかはさん、役によって漂う空気とかお顔があまりに変わりますよね…?その人になっちゃうから、なかなか気付かない…いや私の顔面識別能力の低さもあるんだろうけど…。
細かい表情の変化が愛おしい役だったなあ。将人とお父さんの間での表情がともかく良くて、そんなところにいかに彼女が将人が好きか見えて、そういうの、めっちゃ愛おしい、好き。


翔太はね、なんか、謎のあーこいつはそういうことしちゃうな、ってのがあって。
私自身が田舎出身なのもあるけど、田舎に錦を飾るというか、都会で一旗上げてくるわ、みたいな。そういう、だから尚更どうしようもないとこいっちゃうバカだなあ、みたいな、そういう田舎感…!あるよね…。
それ含めて苦しいやら愛おしいやら…役に対しての幸せになってくれ、はある意味翔太に一番感じた。


刑事コンビ、いやもう、刑事コンビ!!!!!!!!!!!!
出てくる間ひたすらもう腹筋への総攻撃ですよ、分かりますか。石部さんほんと、なんか、びっくり箱なのではないか、この人。
そして、それに応戦する真貝さんよ。応戦するというか、最早騎馬戦か何かか、そうなのか。ふたり相乗効果で高め合っていくのか、そうなのか。
いやもう、まじで、この、ボケとツッコミという枠にすら収まってくれないこの感じ。しゃいしゃいしゃーい!が好きすぎたあの感じ。コンビとしてのバランス最強か…?


とくると、屋代商会ですよ。そもそもこの芝居、笑いの飛び道具な方多過ぎませんか?もしかして観客の腹筋を鍛えるのが目標だったりしますか?
CRさんの、この、ね、トリオになった時の強さ。タケ、ウメと三人のバランスの良さは良かった。何よりこれは刑事コンビにも言えるんだけど、ともかくずっと楽しそうで、それが楽しくて仕方なかったんだよね。いやもう、あの衣装やポーズをあんなノリノリでされたら、最高でしょ。とんでもな展開もどれもひゅーひゅーですよ。そして憎めないあの小悪党感。ギャグとして成立させつつも物語が展開していくそのバランス感覚が最高。


すずさんは、あの、謎の台詞あるじゃないですか。言えてない言えてない!みたいな。
なんか、あのママがいるスナックで飲みたさしかない。いやそもそもこの商店街常連になりたい店が多過ぎ。勘弁してくれ好き。
程々な色っぽさと漂う場末感の、あの、田舎の商店街にいそうな感じ。いる、いるわ、地元に。
マスターもそうだけど、ああいう、バックに居てくれる人、の存在が大きいよね、こういうお芝居って。


マスターとすずさんが、わりと、こう、商店街の日常を想像させてくれるというか。あのふたりの冒頭のやりとりとかもそうなんだけど。入れる茶々とかの、関係性というか。どこまでは野次が飛ばせて、どこから優しくなるのか。そういうさじ加減がともかくすずさんとマスターは心地いい。


木津さんはね、商店街の面々の空気感に触れての表情が最高なんですよ。あんまりね、押し付けてもこないじゃないですか、商店街の面々の仲の良さとかそういうこと。でも、ちゃんと伝えてはくれるじゃないですか。それを、一番感じたのが木津さんの表情だったんですよ。あーいいなぁ、みたいなちょっとだけ揺れるの。でも、社長にとやかく口出しするほどじゃないの。その!空気感!それが!また!更に商店街への(観客の)愛着を増してくれた気がするんだ。だから、思い出してる。


石ちゃんはスタートダッシュでこれは笑うお芝居ですよ、って示してくれて、ほんと、大好き。可愛すぎる。
コンビ、トリオの飛び道具の中で、完全なる鉄砲玉ポジション。
石ちゃんさ、みんな好きになりませんか。そしてそのまま桜井団子のこと好きになりませんか。ああいう子が笑ってるってことの幸せ半端ない。愛されてるところが幸せとかどういうこと。好き。
コロコロ変わる表情と飛び道具的思い切りの良さが好き。


へーちゃんはもう、ほんと、ちょっと好き過ぎて長くなる。淳さん今後ともコメディを、コメディをぜひ。え、てか、ほんとに、淳さんのコメディ天下一品過ぎませんか、めっちゃくちゃ好きだったんですが!知ってたけど!元々好きだけど!
そして、夢さんとのサシのシーン。なんだろう、あれは。
受け取るって話を最近よく考えてて、あの2人は互いが受け取るってことを知ってるのかな。言葉にならないあの空気感。観るのは2作目(ですよね?)なんだけど、その度、言葉に出来ない思いにきゅっとなる。ちょっとこれは消化したい。


大森小林さん、コウさん。物販からね、愛が溢れてたんです。ほんとにね、すごく開演前の物販で嬉しくなったんです、それと地続きな、お芝居だった。
玩具屋は部外者なんだけど、すごくあったかくあの商店街を見てて。その人が茶化したりふざけたりするからなおのこと面白いし、愛おしい。
(話は全く変わるけど、このお芝居は空気を変える特殊スタンド使える人多くて、最高に最高だった。ガラって色を変えるその景色の美しさたるや!)
コウさんと夢さんのサシのシーンも最高なんですよね。淳さん夢さんのがお互い受け取ることを知ってる人たちの遠慮ないキャッチボールだとしたら、コウさん夢さんは共鳴みたいに見えて、あーーー思い出しても心地良かった。


ともかく、このお芝居は、全体的にそんな幸せな空気と音に包まれてたんですよ。


そんで、お話として、今もまだ考えてるシーンなんですが。

頑張ってるよ、と頑張ってるなんて言われたくてやってきたわけじゃないこと。
ってのが、私の中でとても刺さってて。
へーちゃんが、お父さんにひたすら、まぁくんは頑張ってるよ、って言ったあのシーンが優しくて愛おしくて、ダメだったんです。好き過ぎて。情けないことに、うわーこのおでん屋さん行きてえーって思ってしまった。頑張ってるからこそ頑張ってるよ、と言われるんですけどね、そこんとこ忘れちゃダメなんだけどね。
ともかく、あのシーン。父の息子への歯がゆさも、ひとりの人として接してるからこそへーちゃんが感じてる歯がゆさも絶妙な空気の中にあって、だけど互いにたぶん、分かってたんだよね、へーちゃんはそれを父親にへーちゃんが押し付けても仕方ないってことを、父さんは多少父眼鏡(不甲斐なく見えちゃう方にね)を、かけてる自覚が。
その、あの、なんとも言えない、少なくとも私の頭の中にはない空気感に、そしてそれを空気感で見事に表現しちゃうことにあああああってカオナシ化してた中からの、まぁくんの、頑張ってるって言ってもらいたくてしてるわけじゃないっていう、この、、完璧な…流れ……。


コメディなんですよ、コメディなのに、普段私たちがお腹の底に持ってる感情をしかも、一番自然な形で差し出してくるんですよ、Today is Fine day。
コッテコテな笑いで笑わしてきながら、普段の生活の中の言葉に出来ない、するタイミングもない感情を言葉にしてくるんですよ。しかもたくさん笑わしてきた流れで差し出してくるもんだから…拒絶もできず、痛みもなく、受け取れちゃう受け取って思わずしげしげとそれと向かい合っちゃう。ほんと、なんてこったですよもう…。

 


と、いう中で。だから、私はあのお芝居のラストシーンが好きなのだ。あそこまでたくさん笑える非日常で、そして、日常に地続きな感情の中で彼らの言葉と表情に私は今も泣き出したくなるのだ。泣いて、そんで、笑いたくなるのだ。
繰り返しツイートしてる、それくらい、好きなお芝居だった。たくさん笑って、何に対してか分からないけど、大丈夫だって思ったし、思えるからって言い続けてる。
だって、そうでしょ。きっと、明日は晴れるに違いないのだ。これだけたくさん笑った今日の、次に来る日なんだから。