えす、えぬ、てぃ

お芝居の感想など

クレプト・キング

いやこれ、2時間15分じゃ尺足りないな?!
案外と、ひとりひとりのキャラクターについて知らないまま終わってることに感想を書こうとして気付いた。

そんなわけで、ENGさんのクレプト・キング、初日に観に行ってきました。


ある『スリ』の噂があった。
貧しい者からは決して盗らず、標的はいけ好かない金持ちだけ。
盗んだ金の全てを貧しい民に施す義賊の青年。
――彼の名は『月斗(げっと)』といった。

ある日、月斗は追われていた財閥の令嬢をかくまったために、警察に捕まり、投獄されてしまう。
そして、何者かの圧力が加わったのか…… 無実の罪を着せられ、死刑が言い渡された。

牢獄で恐怖に震える月斗の前に、見知らぬ少年が現れる。
鍵のかかった鉄格子の扉を開けることをなく、そのままで……
彼は『レン』と名乗った。

「スリごときで義賊を気取って何になる?
 本当にこの世を変えたいと願っているならば――お前に、それを叶える力を与えよう」

月斗は自分の腕にあるものに気付く……

「それは『盗賊の篭手(こて)』――お前が欲するあらゆるモノを、奪う力を持つ。
 この力をもって牢を破ったならば、その時はお前に、もう一つの姿を与えよう……」

新たな噂が街を駆け巡る。
突如現れた謎の怪盗――貴族の館に忍び込み、悪事の証拠を白日の下に晒す……!
幻を盗り払い、闇に潜む真の悪を照らし出す一筋の月光
――その名は『幻盗・ツクヨミ

新たな義賊の登場に沸き立つ人の群れをすり抜け、
彼は都の中心にそびえ立つ楼閣を見上げた
――この国を治める『皇王・芙陽(ふよう)』の城を……

「いつか必ず、お前からも奪ってみせる」

奪うことしか知らぬスリが手に入れたのは、全てを奪う怪盗の姿だった……

 

これでもか!と込められた厨二的な設定、三次元で見てしまうとともすれば浮きかねない設定は、丁寧な役者さんのお芝居、それを生き生きと輝かせるスタッフワーク、そして、それらをまとめる演出で、浮くどころか、真っ直ぐに観客に届く。
小さい頃学校から帰り、ワクワクしながらオープニングを待ったアニメのようなお芝居、それがクレプト・キングだったように思う。

クレキンの不思議な魅力というか、いいなあと思うところは尺が足りなかった、と思いながらも物足りなかった、とは思わないところだ。
このキャラクターは結局なんだったの?とも、あのシーンなんだったの?とも思わないところだ。

ともかく、私はあの2時間15分を、ひたすらに頭を空っぽにして楽しんだ。

語弊を恐れずに言えば、本当に、大きく心をマイナスに持ってかれることなく。楽しい、という感情でずっと観ていた。
キャラクターたちの時に辛い出来事も含めて、どこか、当たり前のように彼らのハッピーエンドを信じたし、そして、結果から言えばそうなったと思う。

お芝居を、例えば仕事終わりとか学校が休みの日とかに行くじゃないですか。
ブログの他の作品の感想とかで、こう、ぐちゃぐちゃになるくらい色んなことを考える、そんな作品が大好きだし、気がつくとそんな風に私は作品に触れがちなんだけど、
このクレプト・キングに関していうと、なんというか、本当にただただ楽しかった。
オープニングが終わった時、なんでか分からない涙が流れたんだけど、あれは今思えば安心感だったのかもしれない。
あーこっからただただ、楽しい時間がくるぞぉ、という。

決して、ただの明るい話というわけでもなければ、まして、軽い話だと言うつもりもない。
台詞にしろ、設定にしろ展開にしろ、しんどさも悲しさも、怒りもある。だからこそ、あのラストシーンにグッときたんだから。
だけど、それ以上に関わる人たちの、笑顔にするような芝居を、という、そんな姿勢があったんじゃないか。


魅力的なキャラクターたちに、もう一度会いたいと思う。
ただ漠然と魅力的だったと思った彼らの、バックボーンを知りたいとも思う。
だけど、例えばなんなら、スピンオフとかで出会わなくても、私はなんとなく、いいかなあ、とも思う。
彼らの台詞や、シーンを思い出した時、あれはこうだったのかな、と思い出す。そうして、彼等のことを想像する、そんな未来の方が私好みだと思う。

それは、昔見たアニメのことをふとした瞬間に思い出す、そんな心強さに似ていると思うのだ。