えす、えぬ、てぃ

お芝居の感想など

キャガプシー

笑わないと、潰れそうだから笑うということ
全く思っていないことをヒトは口にできないということ
世界は、確かに美しいということ

 


キンキラキンの、ラブに溢れたおぼんろさんの物語。その為に生まれた、キャガプシーシアター。
おぼんろさんの物語に、こんなにぴったりな場所はない。
ほんの少し寒かった寒かったんだけど、それ以上にあったかかった気がする。
白くみえる、役者さんの息に。誰かのもとからやってきた物たちがキラキラと輝く光景に。
ずっとずっと、目を奪われていた。

そんなわけで、おぼんろさんのキャガプシー、初日に行ってきた。おおよそネタバレを含みます!ご注意ください!!

清らかな人間から押し付けられた穢れを浄化するため、
壊しあいをする人形、キャガプシー
そしてそれを生み出すめくらの人形師、ツミと
そんな壊しあいを見世物にするネズミ
10年間、ただただ、キャガプシーを壊し続けたトラワレのもとに
ほんの少しどこかがおかしいキャガプシー、ウナサレが産まれたところから、物語は始まる。

キャガプシーの壊しあいのテレビジョン中継。
ただのショーの時以上に多くの人に見守られながら、物語は進む。彼らの関係は変わる。


独特な世界観と言葉選び。だけど、そのどれもがどこか懐かしい。
産まれた瞬間、ウナサレは絶望する。世界は酷いところだと泣き叫ぶ。そんな彼をそれ以上に強い力で、トラワレがさけぶ、話す。

世界が、どれくらい美しいのかを。


4人の登場人物はそれぞれに、絶望を背負ってる。世界の不幸を背負わされて、この世に生きる。
穢れを背負ったキャガプシーは、恐らく清らかな人間にとっては取るに足らない、視界にも入らないもので、だから、それが互いを傷付けても、見世物に過ぎない。
トラワレの表情や、仕草はとても静かだ。穏やかなのではなくて、幾層にも凝縮された何かが、その底にはある。
ただただ、黙って10年、キャガプシーを壊し続けたトラワレの飲み込み続けた言葉を思う。
その彼が、口を開いた時に表された世界の美しさを思う。
ウナサレは言う。全く思ってないことを、口にすることはできないと思うのです。

ネズミ、という男は自分をネズミのようだと自嘲する。
こそこそと、あちこちを駆けずり回るネズミ。
本当は、彼自身がキャガプシーでありながらそれを隠し、人を殺し、自分の願いのため、ツミやトラワレを犠牲にし利用する。穢れを背負ったからと罵りながら、彼はただただ願いを叶える為に生きる。
いや、ほんとに。こんなに見ていて胸が締め付けられる人もいるまいってくらい、見てて苦しい。その塩梅がお上手な方だよなあと惚れ惚れする。
血が滲むような台詞ばかりで、彼を憎みきれない。
誰よりも苦しんでたのは、誰だったのだろう、と思う。と同時に、より、とかそんなん関係ないなあとも思う。誰と比べて、なんて思う必要はなくて、「彼が」苦しんだ、という、ただそれだけでいいのだと思う。
肩代わりし続けていた彼は、同時に肩代わりさせ続けていて、それでも、彼に用意されたラストは重いつみではあったけど、優しい許しでもあったように思う。

ツミは、というか、めぐみさんのお芝居が本当に本当に好きなんです。
あの、周囲の空気諸共色付ける、あの不思議な力はなんなんでしょう。
笑うと嬉しくなる、悲しみに歪んだ表情には心がざわつく。本当に素敵な女性だと思う。
今回は、とてもピュアで悲しいものを背負っていた女性の役だった。
悲しいシーンでもあるんだけど、ウナサレとネズミの話をするシーンが好きで。あのシーンが好きだからこそすごくしんどいんだけど。
本当に、幸せそうに可愛らしくネズミの話を微笑んで聞くもんだから。そう思うと、ネズミは、もしくは、神様はなんて酷いことをするんだろうと思う。
だけど、同時に力強さもあって。危うさと力強さと。思い返すと、彼女はずっと何かを求め続けていたひとだったように思う。その彼女は、きっと、最後、手の中に何かが残ったと、私は信じてる。


ほんで、ウナサレですよ。
もう、冒頭から、本気で心臓鷲掴みにされたと思った。あんな、喉が裂けそうな叫び声さあ。
力強く動き、手をバタつかせて喉の限り叫んだこと、
笑うということ、言葉や世界のこと、何より、力一杯愛していたこと。
いっこいっこの台詞が、嬉しくて切なくて気が付けば泣いていた。
この物語に出会えてよかったと、心の底から、トラワレとウナサレの会話を聞いて思った。
何より愛したいと叫び続けるその姿を、ずっと見たかったんだと思う。

ウナサレが物凄く好きなのは、
彼は生まれた時、心底絶望して怯えてたわけじゃないですか。
こんな世界に生まれてしまったって嘆いてたわけじゃないですか。
だけど、そうじゃないって教えてもらって、その後どんな答えを知っても笑い続けることと、愛し続けることを選んだかれの姿はなんて優しい物語なんだろうと思う。
そして、それは、物語だと現実から切り離してしまうには、あまりに、生々しい温度と勢いで、心に届いた。


笑わないと、潰れそうだから笑うということ
全く思っていないことをヒトは口にできないということ
世界は、確かに美しいということ

そして、物販で購入した写真セットの4人の写真が、家族写真に見えたこと。
なんだか、それがあまりに優しいことのように思えて、どうかこれからの数日の物語がたくさんの幸せと一緒だといいなあ、と思うのです。
だって、私はこの物語に出逢ったので、まず間違いなくこれからもずっと、幸せなのだから。