えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

朝劇 西新宿 恋の遠心力

2016.10.12観劇



朝劇 西新宿 恋の遠心力
あらすじ
この瀟洒なカフェは、巨大な“宇宙エレベーター”の中にある。
 現在、地表に向かって下降中だ。
 五ヶ月間、宇宙空間で過ごした日々も今日で終わり。
 大勢の乗客たちが、お別れパーティに興じている。
だが、若き研究者、伊吹だけは地球に帰りたくなかった。
 彼は恋をしてしまったのだ、エレベーターのクルーである、アンドロイドに…!
 研究者、アンドロイド、医者、芸術家、パイロットたちが、叶わぬ恋を巡って大騒動。

朝食と、素敵なお芝居で迎える朝。
まず、本当にそのコンセプトが好きでずっと気になっていた企画!(いつかぜひとも下北沢にも行ってみたい)
開場中、役者さんたちが注文をとったりご飯を運んできてくださったりする中で、おいしい朝ご飯を食べながらお芝居の始まりを待つ。すると、いつのまにか、そのカフェはお話の中に出てくる宇宙船内のレストランになってる。もう、この時点で、かなり気持ちはわくわくする。
45分と限られた時間の中で見えてくる登場人物たちの恋愛模様と、そしてそのすぐそばで生活するアンドロイドたち

すごいな、と思ったのが
45分という時間は決して長くない。
だから、ひとりひとりがどんな人生を歩んできて、なにを思って、相手のどこを好きになったのかなにをして一緒に過ごしたのか、なんてことの全てを見ることはできない。
できないんだけど、仕草や交わされる会話、台詞の言葉選びの中で、それがなんとなく見えてくる。その中で、感情移入する。
これ、たぶん、役者さんたちがしっかりその役で、その場で生きているからこそなんだろうなぁとしみじみ。
ただの台詞じゃない、その人の言葉を聞いたような経験。
なんて幸せなんだろう。
印象に残ったのは、「人は、その瞬間瞬間の感情だけでは生きていけないの」
少し自信がないけど・・・。
ともかく、恋に関する台詞の、なんと鮮やかなことか!
時間があれば理解ができるなんてことはないんだろうけど、それでもあの短時間でひりひりするような恋情も、相手を思うあたたかな気持ちも感じられたことは素直にすごいと思った。
会場はカフェなので、目が足りない瞬間がたくさんあった。この台詞をこの人はどんな顔をして聞いてるんだろう、ああでもこの台詞を言う、この人の顔を見ていたいと何度もジレンマにうぬぬってなった。
でも、同時にそれでいいんだと思う。神様のように俯瞰して物事をいつもみれるわけではないし。それ含めて、幸せな観劇だった。
できるなら、何度か通ってそれぞれの表情を見たくはあるけど(笑)だけど、通ったとしても、あのときのあの舞台とは、また、違う舞台なんだろうな。

ツツシニウム キニナルナカミ

2016.10.12観劇



キニナルナカミ

あらすじ
この中には希望と絶望が詰まっている。
開けてはいけない、なんて事はなく。
いたって個人的事情で僕は、開ける事ができないでいる。 
開けなきゃ中は見えないのに、色んな想いだけが渦巻いて
キニナルナカミから目を離せないでいるんだ。
かなり限られた客席、シンプルな舞台セット。
もうそれだけで、かなり心が震える。
物語はどこかにいる、そして覚えがあるどうしようもない人たちの話。
近い距離で暴力的なまでに叩きつけられる役者さんたちの感情放出は凄まじいものがあった。
あとLED照明・・・!!!怪しさ、恐ろしさ。影。そういうのがきれいに出てて、ただただ感服のため息。
舞台をみていて、涙に心奪われるという経験は観劇好きなら一度や二度あるんじゃないかな、と思うんだけど
キニナルナカミも、そういう涙とか汗とかに心奪われる瞬間があった。
そして客席との距離の関係で(特に今回、観劇したのが桟敷席だったのもあって)涙が滲んで目尻にたまって、というのをまじまじと目撃することになった。もうこれがまた、痺れる!!
生身の役者さんがリアルタイムで、目の前で演じるからこそ、「これは現実なのではないか」という錯覚が芽生えることがある。
そんな、お芝居だった。
お話的には、私はコツコツ生きているのに選んでもらえない、竹石さん演じる「かずよし」に共感した。
そうなれないという劣等感も、こんな奴のくせにっていう苛立ちも、どうせ選ばれるのだという諦念も。
あのお見舞いのシーン。ひたすら、自分の名前をおばあちゃんに言うシーン。
あまりに名前を繰り返すので、福地さん演じる役になりすまして(そうすることで、おばあちゃんを喜ばせようとして)いるのかな、と一瞬よぎった。・・・役の名前を覚えるのが苦手なもので。でも、もしそうなら切ないなぁと思った。ので、自分の名前でよかったな。でも、あんなに刷り込むみたいに名前をいって、それでも自分の名前をおばあちゃんが呼ぶことはないなんてのも、ちょっと、残酷だな。

今回のキニナルナカミは、普段、今回出演の役者さんをみる劇場よりも小規模。
受付の近くには、出演もしているはずの福地さんがいて、スタッフさんの数も限られていた。
いいお芝居、というものの定義は人それぞれだと思うしそうあるべきだとも思っているけど、
まさしく熱情に駆られて上演されたようにも見える今回の「キニナルナカミ」が本当にいとおしく、
また、観劇できたことを嬉しく思います。