えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

星野源のおんがくこうろん 第一夜J・ディラ

最近、伏線回収だと思うことが増えた。
たまたまに違いないのだけど、以前ラジオで興味を持った本の生まれるきっかけになったのが最近好きになった別のラジオのパーソナリティだと知ったり、気になるなとぼんやり思って忘れていた曲が最近気になり出したアーティストのものだったり。
ただの偶然と言われればそれまでだし、そもそも興味関心の方向性が決まってるのでそこで好きなものたちがニアミスすることも当たり前といえば当たり前。
なのだけど、私には「伏線回収だ!」と嬉しくなってしまう。
いや、そもそも興味関心の方向性が同じで好きなものたちがニアミスしてるだけだとしても、嬉しい。



知らないけど、今好きなものに影響を与えているもの。



そういうものが綿密に重なって連なって好きなものを作り上げる。その重なりに気付けることも、とんでもなく最高だと思うのだ。



星野源のおんがくこうろん」
新しく始まったその番組が楽しみになった理由はたくさんあるけど、一つにはそんな「今の好きに繋がる誰か」の話を聴ける番組だということだった。


タイムマシンに乗ってその人に音楽以外を勧め、音楽をやらない世界を作れば今ある音楽の多くが消えてしまうもの。


第一回のテーマである「J・ディラ」という音楽家を私は知らなかった。
だから、番組内、様々な彼の曲が流れるたび、新鮮にワクワクした。


初めて知ったけどわくわくするもの。
それが、どこかで今までも繋がっていたと想像できること。


少なくとも源さんの表現に影響を与えているので確実に「繋がっていた」のだ。
よくある私には両親がいて、その両親にもやっぱり両親がいて…とファミリーヒストリーを紐解くように、音楽を紐解いていくと行き着くもの、ひとがいること。それって、かなりわくわくする。


特に音楽に私は知らないことがたくさんある。
日本のアーティストすらそんなに詳しくない私は、海外のアーティストとなればほぼ初めましてで楽しむことになりそうだ。
だけど、初めて最高の音楽に出会ってわくわくできる上にこの番組では、そんな人が影響を与えた自分の身近な音楽にまでの繋がりを聴くことができる。


その全てを好きになるかどうかは分からない。分からないけれど、少なくとも誰かの「これが好きなんだよね」を聴けるわけで、それにも私はわくわくするのだ。


誰かの好きなものの話を聴くのが好きだ。分からないことも多いしそんなのもあるんだ!と驚いてその後、実際に私自身がそのものに触れてみる機会は情けないことにめちゃくちゃ少ない。新しい体験に腰が重すぎる人間なのである。
なのだけど、誰かがこれが好きだという話を聴くと「ああこれがこの人の一部なんだな」と思う。
もしその人の中から綺麗にそれを「好き」という感情を消してしまえばどこかが決定的に変わってしまうんだろう。その好き、は別に特別好き、じゃなくても今も変わらず好きなものじゃなくても、だ。



なんてことを、おんがくこうろんを観ながら考えていた。


そして、J・ディラが音楽を作ることができるということに感謝しながら作っていたというディラさんのお母さんの言葉を何度も思い出す。
大切な人の大切な部分を誠実に語るお母さんの姿にそこに生きているディラのことを思った。



音楽を、お芝居を、文を、何かの表現を生み出すことを考える。


何かを変えるとか、何かを残す、成功する。
誰かを幸せにする、あるいは誰かに合法的に暴力を振るう。
表現にはいろんな意味がある。
あるけど、どんどんそれを掘り起こしていくと至ってシンプルな何かに行き着くのかもしれない。


表現がなくても死にはしない。
私はそう思う。そう思うのと同じ頭で、でもたぶん、何かを表現することは本能に似た何かだとも思う。
生存本能とか、生殖本能とかと同じくらい切実で衝動的なそれなんじゃないか。



そうして作られた何かが作ったその人が予期しなかったような影響まで残してしまう。
確実にJディラは私を知らない。知らないけど、夜中に起き出して録画を観た私の心を確かに揺らして、いま、こうしてぐらぐらと衝動を起こしている。



すごいな、面白いな、それって。


最後のアルバム「DONUTS」の話をしているところがとても印象的だった。
歌詞に残るもの、元ネタのタイトルとそこから生まれた音楽についたタイトル。それを深読みすることもできるし、知らずにただ楽しむこともできる。

誰かが残した何かがそうしてそれぞれの身体のなかでまた違う何かに変わって、そして何かを生み出すのだ。
それってすごく残酷で予想できなくて面白くて最高だと思う。



番組中、源さんのPOP VIRUSが流れていた。POP VIRUS、感染して、それぞれの体の中、気がつけば花開くもの。


実際、面白いことはすごい。



それを、生きる理由だと呼びたいくらいにはガツンと殴られたような気分だ。




YouTubeで未公開シーン含めて公開してくれるところまであまりにも最高だ…。来週も楽しみ。