えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

ポップンマッシュルームチキン野郎さんのお芝居にめちゃくちゃ抱き締められてる

ポップンマッシュルームチキン野郎さんが、過去の作品の無料配信を始めた。
そんな中、今日アップされたのは赤カブトさんの一人芝居、「私の彼は甲殻類」だ。
めちゃくちゃ声を上げて笑った。一人芝居だけど、目の前にあひる口で謙遜する彼女や甲殻類が見えるみたいだった。


何が起こってるかは分かるけど理解らない。
そんな心地の良い時間に、ああ、ポップンマッシュルームチキン野郎さんだ!とはしゃいでしまう。

 

 

ポップンマッシュルームチキン野郎さんが、開演前に流されていた(今は変わったはず…好きすぎていつもあの曲を口ずさみそうになるけど)「ポップン!マッシュルーム!チッキン野郎ー!」の明るい名乗りからの、始まるよ始まるよ、という声を思い出してる。私はあの曲が大好きだ。


お芝居が、始まるその瞬間がたまらなく好きだ。


その中でも、ああしてワクワクと、楽しさを増やしてくれるポップンマッシュルームチキン野郎さんはあまりに「らしい」。

 


あるときは、人の言葉を話す未来が分かる犬がマッサージチェアやニワトリ、トカゲの仲間と大切な人を幸せにしようとする話を。
あるときは、頭だけの少女を中心に巻き起こる第二次世界大戦中の話を。
あるときは、サボテンやナップサックが出てくる銃声を聴くと記憶を失うガンマンの話を。

 


基本的には理不尽さが縦横無尽に溢れ続ける劇団である。
「なんで?」なんて思ってはいけない。そうなんだ!ととりあえずいったん、目の前で起こってることを素直に受け止めることから始まる(これ、確か、最初に行ったコメンタリーイベントで言ってて、後から思い出しては納得して笑ってしまう)

 

 

そう、最初はゲスト目当てで行ったイベントだった。生コメンタリーのような状況下でも、引き込まれた映像。そして、目の前で起こるよく分からない出来事たち。


ただ、私は、初め、彼らのトリッキーさに惹かれたわけではなかった。いや力いっぱいその設定やギャグには笑っていた。
笑っていたんだけど、何故か、心の奥底を揺さぶられてるような感覚に陥っていた。
私、犬コロ初演の映像を初めて見た時前説のパフォーマンスで泣いたんですよ。わりと号泣に近くて。そしてご存知の方は分かると思うんだけど、たぶん、あれは、号泣する内容ではない。

 

 

で、考えていたんだけど、
たぶん、彼らは本気でやってるんですよ。
別に「ナップサックが大統領目指したら面白いだろうなあ」とか「マッサージチェアが喋ったら笑ってくれるかな」とかじゃないんですよ。いやもしかしたら一瞬くらい過るかもしれないけど、舞台にのってるその瞬間は120%本気なんです。
100%ですらない。
彼らは、本気でナップサックとして生きたり、マッサージチェアとして生きたり、ヨドバシカメラビッグカメラが戦争をするような世界を描くんですよ。
不謹慎も下ネタも、ぶっ飛んだ設定も本気でやってるんですよ。茶化したりバカにしたりじゃなくて、もうそこには「マジ」しかないんですよ。何があったらそんなことになるか、も、ぜんっっっっっぜん分からないんだけど。


それが、表面的にはほんと、意味分からなくて爆笑しちゃうんだけど、でもなんか、時々無性に泣きたくなるんだよね。
そんで、いっつも、そんな彼らが心の底から好きになっちゃうんですよ。

 

 

吹原さんが描くのは「あり得ない設定」に覆われた、どこにでもある現実の話なんじゃないか。

 

これは、度々言ってることだけど、ポップンマッシュルームチキン野郎さんはそれだけ面白い設定でお芝居を作るんだけど残酷なシーンはめちゃくちゃ怖いんです。
こわいっていうか。
とりあえず、私の中で今のところ「人を殺す」ことに長けてる劇団ナンバーワンなんですよ。
別に惨く殺さないし、血のりなんてのっけないんです(これは別にそうするのがダメってことじゃないし、血のりバンバン使うタイプの殺しのシーンで悲鳴を飲み込んだことも沢山あります)
ただ、「人が人を殺すこと」のその時の心情の動きとか……しかもそれは激情ですらなくて、「無い」こともある……をそのままにのっけるものだから。

 

 

ああ、なんか、良かったな。ブログで文字で起こして。たぶん、そこなんだろうな、一番あの劇団さんのお芝居が好きな理由。
あんなにぶっ飛んだ設定なのに、ずっと、生きてるんですよ。嘘ひとつなく。
それが毎回、居心地が良いって思うんだな。
たまにどっと観劇後疲れることも納得した。何人もの人の濃密な人生を2時間近く浴びてるんだもんな。

 

 

吹原さんの本が好きだ。
あなたの心を抉り取って抱き締めます、という言葉が私の心の中にずっとずっと残ってる。
確かに、抉られるのだ。
人間のどうしようもなさ、ずるさも、残酷さも描く。
人生というか、生きてることの虚しさだって、容赦なく描く。


少し話はズレるけど、吹原さんが、生き続けることが希望だ、と書かないことが好きなんですよ。
いつかこれもゆっくり考えたいんだけど吹原さんは時々「死ねないこと」について描く。
死んでしまう悲しさを描くことが一般的に多いなかで、むしろ真逆の死ねない苦しさ、を、テーマの一つに置いてるかのように、描き続けている気がする。私は、その物語の一つひとつに触れるたびに大きく息をしている。これについて掘り下げるのは、また別の機会にするけど。

 


ただ、同時に。そうして、死ねないこと、死を望むことを描けば描くほどに、「生きること」への優しい眼差しを見るから、私は泣き笑いしてしまう。

 

 

ポップンマッシュルームチキン野郎さんが好きだ。
あの劇団の人たちが心底楽しそうに、舞台の上で生きている姿が、時間が、大好きだ。
吹原さんの脚本が好きだ。
あなたの心を抉り取って抱き締めます、という言葉が私の心の中にずっとずっと残ってる。

ポップンマッシュルームチキン野郎」のお芝居に抱き締められているから、なんか、めちゃくちゃ心強いのだ。

 

 

https://twitter.com/pmcguys/status/1244842737922240512?s=21

過去のDVDも今たくさん販売されてるので良ければ!「うちの犬はサイコロを振るのをやめた」「R老人の終末の御予定」めちゃくちゃ面白いよ!というか、全部面白いよ!

 

https://youtu.be/97wfnC4a_Ng

 

短くずしっとくる素敵なお芝居もあるよ!

 

https://youtu.be/CzaAy1NQDc4

今回配信が始まったやつだとブログ内で書いてた曲も聴けます。というか、あれ、変わってないかもしれない?!自信がないぞ記憶に!