えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

カメラを止めるな!

馬鹿馬鹿しいほどに笑って、笑って笑って、ほんの少しじんわりした。
夏休みに、親や祖父母に連れて行ってもらった映画でやったみたいに「楽しかったねえ」とにこにこ、映画館を出たような、そんな気持ちで
私は友人と楽しかったねえと笑いながら外に出た。


カメラを止めるな!はたぶん、情報を入れて観てしまうとその魅力を本当には味わえないと思うので、まだ観てない人はこちらでお引き返しください。ネタバレ?おーけーおーけーって普段言う私が!絶対にネタバレを見ずに観てくれ!!!!と叫んでるので、どうか!どうか!!!!!!

 

 

 

 

 


安い早い、出来はそこそこな映画監督が任された無茶苦茶な生放送ゾンビドラマ(何故生放送なのにゾンビという題材を選んでしまったのか
集まったキャストは我儘だったりアル中だったりクセが強いどころかクセしかない。
だけど監督は、仕事の為、家族のため、メガホンを握るのだ。

起きる笑いについての解説は、野暮なのでしない。つーかできない。
だけど、あちこちにある笑いの要素をそれはもう丁寧に余すところなく、徹底的に拾ってはぶつけてくる。
私は、久しぶりに映画館内の空気があんなに一体になるのを観た。しかも、いつも贔屓にしてる程よいキャパの映画館ではなく、そこそこに大きい映画館の大きなスクリーンで。あれは、もう、一種の奇跡だった。みんなが楽しそうにゲラゲラ笑ってる。映画は、いや、映画も、一緒に観るお客さんで大きく表情を変えるんだ、と私は心臓がドキドキした。奇跡みたいだった。

この映画へのいろんな人の愛は、観る前から伝わっていた。たった2館で始まった映画は、前代未聞の広がりを見せた。
きっと、そのニュースに色んなものづくりに関わる人も、そしてそれを楽しみに待つ人も、心が震えていた。
良いものを作れば、それは奇跡を起こす。なんども、物語の中で描かれて、みんなが信じたくて、でも、折れそうになることが現実になった。それが嬉しくて、かつ、作中の彼らにリンクして、きっと、みんな、この映画について口にしたくなるんだ。
有名な役者さんや原作、あるいはスポンサーや資金で左右される宣伝とかじゃなくて、有名アーティストのタイアップじゃなくて、ただただ作品で、広がっていく。映画の規模じゃない。面白いか面白くないか、そして、それを必死に伝え続けられるか。それだけ。

映画はもう終わったとか、日本の映画はクソだとかそういう勝手に諦めてんじゃねーよバーーーーカ!って叫びたくなるようなことに中指を立ててくれてるような気がして、私はただひたすら、スカッとしていた。


監督が、次第に熱を帯びて撮影していく。最初は我儘だったキャストが集中していく。ギリギリで、撮影は絶妙な飛行で、進んでいく。
ヒロイン相手役の、それっぽいこと言ってるだけの俳優さんがもうなんか、必死でって言うシーンがあって。そこが、まず、すげえ嬉しくて。
映画も、演劇も、そうだよなって、なんかもう、なりふり構わずなんだよなあって。
だけど、娘さんの良いから本物をくれよ!と、叫ぶだけじゃうまくいかなくて、あーそうっすよね、分かりましたって納得いかなくても笑わないといけないこともあって
私みたいな受取手が察せないくらい、或いは逆に察してしまうような、仕事として飲み込む瞬間もあって。
だけど、それをぜーーーーんぶ飲み込んで、カメラを止めずに走り抜けるのだ。

 


俺の作品なんだよ!って叫んだ監督の言葉を昨日から何回も何回も、思い出しては泣いてる。それくらい、愛されて意地はって諦めて、だけど手放されず、私の好きな作品は生まれてきたんだって泣いてる。
監督だって、スタッフだってキャストだって、そしてきっと、客だって。俺の作品なんだよ!!って叫んでるのかもしれなかった。


すぐ愛がどうの言っちゃうけど、これは、間違いなく愛だった。嬉しかった。


もちろん、日本には、世界にはまだまだたくさん面白い作品がある。それを、もっかい思って、私はわくわくしてる。わくわくしてていーんっすよね、監督、と私は心の中でつぶやいてる。だって今日も、どこかでカメラは回り続けてるんだから。