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えす、えぬ、てぃ

お芝居の感想など

死ねない男は棺桶で二度寝する→

死ぬことは希望なんじゃないか。
素直に言えば、最初に思った感想はそんなことだった。

PMC野郎さんの魂の二本立て。
死なない男は棺桶で二度寝する、から、オハヨウ夢見モグラと二本立て続けで観劇。
これ、たぶん、順番によって受ける印象変わるよね。

それぞれのあらすじはこちら
「死なない男は棺桶で二度寝する」
悠久の時を、ただ一人孤独に生きていく不死身の男。聖徳太子とイントロクイズに興じ、織田信長に王様ゲームを教えた彼の孤独を、誰も知る事は無い。何故なら、彼の正体を知ってしまった者は、誰一人として彼の事を覚えていられないからだ・・・。
一方、現代。恋人の六郎と別れようかと悩む記者の信子は、取材先の精神病院で、不死身の男の存在を聞く。
やがてそれは六郎や自身の家族、果ては時の総理大臣まで巻き込んで、遥かなる人類の歴史に、小さなうねりをもたらしていく。
自分自身の境遇を呪い、その悩みを誰とも共有できない孤独な男。
終わりなきパレードの果てに死なない男が行き着く先は、限りなく孤独な生か、限りある幸福な死か?


記憶、人間という種の集合体、死。
いくつかの共通したテーマと、設定で別々の物語でありながら、
二本観れば点と点が繋がる。
とりあえず、まずはひとつひとつ感想を書いて行きたい。

「死ねない男は棺桶で二度寝する」
前半の怒涛の不謹慎な笑いと、そして、後半明かされる事実。吹原さんワールドを堪能!みたいな気持ち。
死ねない、という言葉通り、六郎にとってはそれはマイナスだ。
パンフを開いたページのどこかを見つめる六郎の目が寂しい。死ねないことを知られればその相手の記憶から、彼は消えてしまう。だから、一緒に過ごす時間は束の間だ。ただでさえ、ひとり生き続けなければいけないのに。
吹原さん脚本の好きなところは物語の本筋以外のキャラクターたちがともかくぶっ飛んでて愛おしいことだ。あまりに愛おしくてどこか本筋か分からなくなるくらい。総理に愛人、秘書に息子、横綱。さらに、ノンちゃんのお姉ちゃん。
これでもか!というくらいキャラクターが濃い。
ノンちゃんとお姉ちゃん、とその手のやり取りには思い切り笑ったり和んだりしたし、総理をはじめとする友人たちとのシーンはもう、本当に最高だった。切れ味ありすぎだ。そして案外あっさり人が死ぬ。主人公は死ねないというのに!

死ぬ、といえば、今回PMC野郎さんの作品で初めて刀を使っての殺陣を見た。
ゲキオシ!さんのインタビュー記事にもあったけど、その泥臭さ、血生臭は凄まじかった。
吹原さんの描くキャラクターが愛おしいのは、同時に描かれる作中にとんでもない痛みや憎悪があるせいかもしれない。
それが今回は殺陣というある意味分かりやすい痛みとして描かれていたけど、それは今まで観てきた作中でも、感じてた痛さだったように思う。

一郎が、人魚の肉を食べるシーン。
あのグロテスクさ。
彼はそうまでしてでも、妹や村を傷付けた男たちを斬りたかったのか。
あのシーン、明確な言葉で一郎の気持ちが語られないことに、グッとくる。
ただただグロテスクな呻き声と照明とか、描き出す。
それらが、その後一郎が背負う地獄を思わせるようだ、と思う。

六郎が不老不死であることを、知った人間は忘れてしまうということの苦さは、下下さんの熱演が伝えてくれた。
忘れられること。忘れてしまうこと。
その苦しさに優劣はつけられないけど、下下さんの、そうだ、あいつにあったらあなたが彼を殺してあげてください!の台詞の熱量が忘れられない。
身体中に傷で名前を掘るほど、 彼は彼女は、六郎のことを想っていた。
そのことに、愛情と、そして彼の記憶を失うことの哀しみを想う。
そう考えると、総理と六郎のシーンの穏やかさはまた違った感慨がある。
総理、すごいな、と思う。
あのお別れのシーンも、本当に美しい。

統合失調で生み出した妹と友人との会話は胸を締め付けられた。
本当に存在してるように思わせてよ、という六郎の言葉に困ったように笑う妹と友人は、ある意味では、彼がまだ狂いきれないというか、まともであり続けてしまう、つまり、自分はひとり生き続けなきゃいけない事実を真っ直ぐに見つめ続けているということではないだろうか。

ひたすらに苦しい、死ねない男は棺桶で二度寝する、は、ラストシーンで優しく美しい光に包まれる。
死んでしまう、という希望を彼は選べない。生き続けなきゃいけない。それは、重く孤独な生だ。
だけどきっと。
傷付いてでも彼を覚えていようとしたノンちゃんや、愉快な友人たちの存在が、そんな生の中、ぽきりと折れてしまわないように支えてくれるんじゃないか。
だからこそ、彼は歩き続けなきゃいけないが、決してそれは、哀しいだけのことではないと思う。


ちょっとあまりに長くなったので、いったんここで止める。
オハヨウ夢見モグラの感想と、全体の感想はまた次回。
魂の二本立て、さすがすぎる!