えす、えぬ、てぃ

好きなものの話をしよう

レプリカ

ディー・コンテンツ
「レプリカ」


「あなたの命は本物ですか?」

一人の高校生ボクシングチャンピオン。
その彼に密かに想いを寄せる少女。
過去に娘を亡くした一人の刑事。
そしてある日突然流れるニュース。
そこで伝えられる驚愕の『催し物』

翌日行われるのは、
本物の人間であるかの全国民検査。

もしも突然、
大切な人間を失ったらどうしますか?
涙を流して悲しみますか?
少しでも早く忘れて生きていきますか?
その選択肢の
どちらを取ることも出来なかった、
何組かの男女の物語。

 

飛ぶ鳥を落とす勢いの劇団
「企画演劇集団ボクラ団義」主宰久保田唱。
ドラマ、そしてロジックを大胆に組み合わせるその作風は、多くの演劇ファンを魅了し続ける…。

そんな久保田唱が今より十年以上前、
ボクラ団義結成以前に書き上げた幻の作品
「レプリカ」。

数年前に上演されながらも、
本人が更にそれを大胆に大幅リライトの上、
自ら演出。
彼の現在の創作活動の源流とも言うべき作品が、無くなりゆく劇場笹塚ファクトリーにて
上演決定!
はじまりと終わりの交錯、御期待下さい!


上演当時も、ものすごく、評判がよくて
観にいった人たちも本当に絶賛してたので、楽しみにしてた。
結果、想像以上だった。


レプリカ、人間じゃないのに、人間だと思い込んで
死んでるのに生きてると思い込んで生きている偽物。
偽物は排除しなきゃいけない、偽物なのに本物だと思い込んでいるのは不幸だ。
少しSFのような設定だけど、それはもっと身近な何かに置き換えられるような気がして、観てる途中何度も一時停止して、いったん落ち着こう、と白湯を飲んだ。DVDで観てるとそういうことができて便利ですね。

まず、メインの高校生たちがキラキラしている。
ビジュアル発表当初から、ご本人たちが高校生だってーー?!!というようなツイートをされていたけど、
やっぱり、動いてる姿を見ると「高校生」なんだよなあ。
ボクシング部の男子三人。
たとえば、竹石さん。途中、自分がレプリカだと知って、叫んだり泣いたりするシーン。
ボクラ団義さんのお芝居で、竹石さんのそういうお芝居を観たことはあるけど、
今回の、叫んだり泣いたりは、高校生のそれだった。
わけわかんなくて、エネルギーが内側にこもっちゃってて、それをなんとか発散させようとして、でもそのうまい発散のさせ方が分からなくて。
熱血な演技が魅力的な加藤さんも、すごい気迫とひょうきんさの使い方がいつもグッとくる宗さんも。
いつもの魅力はそのままなんだけど、でも、表現は高校生だった。すごいなあ。


そして、親組の役者さんがまた、いい。
親の葛藤。エゴ。
愛情。
死んでしまった子どもへの執着や、レプリカという偽物に変えてしまった後悔。
それが吐露されるシーンの、エネルギー。
苦しくて苦しくて。もう、炬燵に潜ったね。
あと、印象的なのが、「あなたは罰せられることはない、罪を償うことはできない」という、かみくらさん(漢字を確認できないため、平仮名で失礼します)の台詞。
ボクラ団義さんの、さよならの唄という作品、あと、つい先日まで上演されていた今戻の冒頭でも印象的な罪と罰、償い、という言葉が出てきた。
久保田さんの中で、ひとつのテーマなんだろうか。

沖野さんの身を切るような台詞は、そのまま彼の中にある葛藤を伝えてくる。
そして、それに返す台詞が優しくて。
そのままで、良かったんじゃないか。
優しい分、辛い。

何が正しいのか、何が「人間」なのか。
誰が、不幸で、幸せなのか。

観てる人が、それに苦しくなった頃、物語は佳境を迎える。
きーぼーさんの、台詞が優しくて悲しい。もう、この、台詞。すごい。きーぼーさんの台詞、なんであんなに沁みるのか。

この物語をお芝居で観れてよかったなあ、と思うのは
お芝居が、観て触れて時間を重ねるからだと思う。
言葉では追いつけない、言えない、分からなくなることも
理屈でがんじがらめになることも。
触れ合ってしまえば、案外簡単に通じたりするのかもしれないなあ、と
最後、触れ合う二人や、抱き締めた親子を見て、思ったり。

そして、最後のじゅんさんの台詞がまたお洒落だ。
他人を思いやれる唯一の生き物。
物語の途中の、色んな人の言葉や行動を思い出す。
し、そんな神様、が人間臭いっていうのが、また絶妙に素敵。

いいお芝居観たなあ( ´ ▽ ` )

1月のRe:callも、楽しみになりました。期待!